カテゴリー:書棚

ラスプーチンが来た

 各地で話題になっているこいつチートだろ、っていう歴史上の人物と何したか書いてけ 明石元二郎が取り上げられていますね。
 この明石元二郎、帝政ロシアの根幹を揺さぶりその崩壊を招いた立役者と言えるほどの天才的な諜報員でしたが、奇行で知られた人物でもありました。特に清潔面への無頓着ぶりは凄まじく、陸軍幼年学校では垢だらけで平然としており「汚れの明石」とあだ名されたと伝わります。

 さて、明石元二郎を主役とした伝奇小説をご存じでしょうか。山田風太郎のいわゆる「明治もの」の一冊、『ラスプーチンが来た』がそれです。
 主人公は若き日の明石元二郎。怪物的な宗教家・稲城黄天に攫われた少女・竜岡雪香を明石が救うこととなる事件から物語は動き出します。
 明石と雪香を中心に蠢くは、長谷川辰之助こと二葉亭四迷、内村鑑三、乃木大将、オッペケペーの川上音二郎、アントン・チェーホフと、同時代の偉人怪人奇人ばかり。そして物語後半、明石のライバルとなるのはかのラスプーチン

 これだけのキャスティング、明治という魅惑的な舞台装置、さらに作者が山田風太郎とあってはつまらないはずがない。
 序盤こそ明石と黄天の虚々実々の対決がメインですが、ラスプーチンの登場と共に、物語は大津事件の驚くべき真相をめぐって急展開を見せます。果たしてラスプーチンの狙いとは? 快男児明石は稀代の怪僧ラスプーチンにいかにして立ち向かうのか? そして、明石と雪香の恋の行方は……?
 とまあ、読む手を止めることが出来ません。巻措く能わざるというやつです。

 練り込まれたプロット、虚と実の境を疾走する山風一流の筆さばき、そして快男児としか言いようのない明石元二郎の造形と、多方面に渡って隙のない快作です。やや尻切れとんぼなのだけが悔やまれますが、明治もの有数の傑作といっていいでしょう(もっとも、明治ものは基本的に外れがないのですが)。

 品切れのようですが、古書で意外と見かけます。amazonでも文春文庫版が安く売っていますね。伝奇小説好き、歴史小説好きな方は是非どうぞ。


ラスプーチンが来た 山田風太郎明治小説全集 11 ちくま文庫ラスプーチンが来た 山田風太郎明治小説全集 11 ちくま文庫
山田 風太郎

筑摩書房 1997-10
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投稿者: 日時: 22:06 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「プリーモ・レーヴィへの旅」

プリーモ・レーヴィへの旅プリーモ・レーヴィへの旅
徐 京植

朝日新聞社 1999-07
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 まず最初に、本書を読まれる前にレーヴィの著作、特に『アウシュヴィッツは終わらない』に目を通しておくことをお勧めします。レーヴィの思想を縁として思索が展開されていくからです。文章はその度に引用されますが、矢張り全体像を知っておいた方がいいでしょう。

 1987年、プリーモ・レーヴィの死が大きな波紋を投げかけました。アウシュヴィッツ強制収容所からの生還者であり、「許す人」と評された彼に何があったのか? 無数の人々がその死の意味を探り、語り、何よりも戸惑ったことでしょう。著者の徐京植も例外ではありませんでした。徐にとって「プリーモ・レーヴィは『人間』の尺度だった」のであり、「彼こそがオデュッセウスだった」のですから。

 徐はレーヴィの墓に詣でるためにトリノへと向かいます。ミラノからトリノへと向う普通列車で、人の溢れるローマ街で、墓参の帰路で、徐はアウシュヴィッツ帰還後のレーヴィの足跡を辿り、その死の意味を問い続けます。

プリーモ・レーヴィが自殺しなかったならば、すべてが単純明快であっただろう。苦難に対する人間性の勝利と救済の物語、オデュッセウスの凱旋の物語。……私たちのほとんどは自らの浅薄さと弱さのゆえに、その単純明快さにすがりつこうとする。だが、薄暗い宙空に身を投じたプリーモ・レーヴィは、自分自身の肉体を石の床に打ちつけることで、私たちの浅薄さを粉々に打ち砕いたのだ。(p. 223)

 アウシュヴィッツという極限的状況で完膚無きまでに打ち砕かれた人間という「尺度」。その「尺度」をいかに再建すべきか。「こちら側」と「あちら側」に隔てられてしまった世界をいかに再構築すべきなのか。今なお進む「尺度」の破壊にいかにして抗すべきか。
 徐の、レーヴィの言葉は我々に重い問いを突き付けます。問いは尽きることなく、明確な回答が与えられることもありません。
 それでも我々は知り、思索し、理解しなければならない。終章の題ともなっている「一瞬の光」、普遍的な「尺度」を見出せるかどうかは個々に託されているのです。

 文章は読みやすいですが、内容はひたすら重い。テーマがテーマですし、「善意で小心であり、正直で無気力」な人々への批判の筆の鋭さは時に息詰まるほどです。とはいえ、一度は読んでおくべきでしょう。まずは自ら読み、考えなければなりません。

 著者の徐京植は東京経済大学で教鞭を執る作家。在日二世でもあり、思想弾圧による投獄を経験した二人の兄を持ちます。著作に『ディアスポラ紀行――追放された者のまなざし』など。

・追記

 良書にも関わらずネット通販では軒並み品切れです。題材のためもありamazonでは異様な高値がついていますが、大きめの書店で数度在庫を見かけました(私はジュンク堂の池袋店で購入しました)。探してみてはいかがでしょうか。紀伊国屋書店にも幾つか在庫があるようです。

投稿者: 日時: 21:55 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録:「夢遊病者の円舞曲」

夢遊病者の円舞曲夢遊病者の円舞曲
松井 邦雄

作品社 1982-01
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 まずタイトルがいい。『夢遊病者の円舞曲』という響きからして絶妙です。これだけで映画や小説が一本出来てしまいそうだ。
 さて、私がこの書を知ったのは久世光彦の好著『蝶とヒットラー』でのことでした。それ以来気になっていたのですが、近場の古書店で偶然発見したので即購入。一読三嘆した次第です。

 著者の松井邦雄はラジオ東京(TBS)のプロデューサーであり、ラジオドラマなどを手がけていました。優れたエッセイストであり、『望郷のオペラ』『ヨーロッパの港町のどこかで』などの著書があります。
 本書は古今の歌を縁に著者が記した「コラージュ風臨書報告書」ですが、なんといっても文章がいい。感傷的とすら言える情緒的な甘さとおそるべき博識が渾然となり、阿片にも似た酩酊的な文章世界を作りあげています。
 実際に引用してみましょう。

こんな夜は、サメディ男爵も死霊たちも墓地の片隅で雨に打たれながらなにがなし身を噛む悲しみにひしがれてもの思いに耽ったりするのだろうか。「シュクーヌは妙にけだるく里心をそそる。私もまた愁い顔でラム・パンチを追加することにした。

 いい。文章もいいし、サメディ男爵というのがまたいい。声に出すだけで酩酊できます。色気と渋みのある声で語って貰いたい。
 黒いパイプ、肺病病みの少女、幻想のベル・エポック……扱われたモチーフはどれも浪漫的でありながら放縦に流れることなく、端整さを失っていません。久世光彦の文章もそうなのですが、優れて知的な書斎派がパイプを片手に語っているような印象を受けます。
 絶版ではありますが、入手は容易。お勧めです。

投稿者: 日時: 21:27 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「だれもがポオを愛していた」

 ご無沙汰して申し訳ありません。庵主は何とか生きてます。
 久々の更新はお勧めの小説を一冊ご紹介。

だれもがポオを愛していた (創元推理文庫)だれもがポオを愛していた (創元推理文庫)
平石 貴樹

東京創元社 1997-08
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<あらすじ>

 メリーランド州、ボルティモア。古くから良港として知られるこの独立都市で奇妙な事件が起きた。日系人兄妹の住む館が爆発し、沼へと沈み込んだのだ。妹は奇妙な言葉を残して絶命し、兄の遺体は沼へと埋もれてしまう。兄妹の姓は「アシヤ」――『アッシャー家の崩壊』である。ナゲット・マクドナルド警部補ら州警察が奔走するも、彼らを嘲笑うかのような怪事が続く。死せる美女の歯が折りとられる『ベレニス』、片眼の黒猫と女の遺体が壁に塗り込められた『黒猫』……事件全てが、ポオの小説に見立てた殺人を暗示していた。混迷する事態に挑むは宝石の頭脳を持つ少女、更科丹希。デュパンの直系たる名探偵の披露する推理とは、果たして。



 タイトルとあらすじだけでもうノックアウト。
 ポーの見立て殺人をテーマとした名作です。いわゆる「新本格」前夜に発表されその筋では高い評価を得たものの、一般にはあまり知られていないまま単行本、集英社文庫版、創元推理文庫版全てが絶版。実に惜しい。

 あらすじでおわかりの通り、本作中の殺人事件は全てエドガー・アラン・ポーの諸作品をモチーフとしています。棺に横たわる美女の歯が折られている『ベレニス』のくだりは特に凄惨で印象的。また、探偵役たる更科丹希(通称ニッキ)の披露する推理は心理分析と瑣末とも見える事柄の観察を主としているというデュパン式であり、全編に渡りポー尽くしと言えましょう。

 入り組んだ状況が流れるように整理され、巧妙に張り巡らされた伏線の中から驚きの解決が現れるくだりの心地よさは本格ならでは。あっと驚くどんでん返しという類のトリックでこそありませんが、精緻に仕組まれており唸らせてくれます。合理と不合理の間にたゆたい、着地する感覚が味わえることでしょう。

 登場人物たちの名前の多くが駄洒落なのは作者の遊び心でしょうか。更科丹希は言うまでもなく『更級日記』ですし、ナゲット警部補の上司はケロッグ警視、同僚はナビスコやバドワイザーときています。この手のネーミングは好みが分かれるところかもしれませんが、読んでいる分には然程違和感がありませんでした。

 なお、巻末に付された「『アッシャー家の崩壊』を犯罪小説として読む」は必読。かの『アッシャー家の崩壊』を注意深く読みほどき、一つの犯罪を指摘するこの論考は、ある意味で本編以上に素晴らしい出来となっています。このためだけに読む価値があると断言できます。

 amazonの創元推理文庫版はやや高値となっていますが、集英社文庫版(中身は同一)が容易に入手できます。本格好きや怪奇幻想愛好家の方は一冊いかがでしょう。

投稿者: 日時: 21:41 | | コメント (0) | トラックバック (0)

人類が消えた世界

 昨年、人類が突然消失した地球の未来を予測した科学書"The World Without Us"が話題になっていましたが、その邦訳『人類が消えた世界』が発売されております。

 早速買ってきて読んでいる最中ですが、期待以上の好著。単なる空想劇ではなく、数多くの専門家への聞き取りや綿密なリサーチ、そして地球形成史や人類誕生史に基づいた思考実験が成されているため非常に説得力がありますね。
 扱われる時代の幅は広く、人類消滅直後から五十億年後までを一望することが出来ます。
 消滅から数日で排水機能が麻痺し、地下に貯まった水、そして雨水が地上に押し寄せニューヨークを水没させてしまうというのは衝撃的。東京にしても似たようなものでしょう。私たちは安全で安寧な都市生活を送っていますが、薄氷一枚を踏み抜けばそこに破滅が待っているというのを実感させられます。
 巻末の参考文献も充実しており、読書ガイドとしても有益。これはお勧めですよ。

 また、日経サイエンス2007年11月号に、『人類が消えた世界』著者であるアラン・ワイズマンへのインタビューを元にした「もし人類が消えたら地球は?」が掲載されています。タイトル通りの内容を概観しているほか、ニューヨーク崩壊のタイムテーブルがわかりやすく図示されており理解の助けになります。図書館などで探してみる価値はあるかと。

 余談ながら、本書に記された「人類消失後の世界」は圧倒的な自然の力に充ち満ちており、終末的な色彩は全くと言って良いほどありません。
 言うなれば霙姉さん的な、あるいはノストラダムス的な終末世界とはちょっと違うのですね(数十億年後ともなると話は別ですが)。
 考えてみれば、消失してしまっている以上終末も何もないのは当然ではありました。


<関連リンク>
終末の過ごし方
『幻想文学 世の終わりのための幻想曲』

投稿者: 日時: 22:18 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「見えない精霊」

 久々に読書録など。

The unseen見えない精霊 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)The unseen見えない精霊 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)
林 泰広

光文社 2002-04
売り上げランキング : 111300

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<あらすじ>

「『見える』ことが能力の拠り所の魔法遣いが『見えない』精霊に勝てるだろうか?」

 インドの森深く、売れないカメラマンである「僕」の目の前で老婆は語り始める。その声と言葉は「ウィザード」の通り名で知られる伝説的カメラマンのものだった。
 ウィザードは不可能を可能にする男。彼は、ジャングル全てを統括する大シャーマンの写真を撮影したという。大シャーマンの村に住まう人々は激怒したが、ウィザードの巧妙な罠の前に彼らは為す術もない。
 ウィザードに死をもたらすべく、村の長老は一人の少女を呼び寄せる。人にして人ならぬ者たちが住まう『結界の村』から招かれた、霊界の力を宿す美しき少女。
 ウィザードが信じるのは論理と頭脳。
 少女が仕えるのは「見えない精霊」。
 新月の夜、闇に覆われた飛行船でウィザードと少女の戦いが始まる――



 2002年に出版されたミステリです。
 あらすじでおわかりの通り、本格ミステリとしてはかなり異色の設定を有しています。主となる舞台はジャングル上空に浮かぶ巨大飛行船、頭脳明晰、大胆不敵なウィザードに対するは美貌のシャーマン少女。この設定だけでご飯三杯はいけますね。こういう外連味は大好きです。

 ストーリー面は薄く、話の大半は飛行船という密室内におけるウィザードと少女の知能戦に割かれています。ミステリとしてはかなりフェアに出来ており、伏線も丁寧に張られていると言えるでしょう。特筆すべきは、段取りの上手さ。中でも、「一方通行の飛行船内を一周したら、そこにいたはずの人物が消え失せていた」といった人間消失トリックの解決は鮮やかです。

 根本のトリックそのものにはバカミス傾向があり、好みがわかれるかもしれません。ただし、その使い方が大変に上手い。たった一つの仮定を導入することで神秘的に見えた謎が解明されるというタイプの作品です。こういうミステリ好きなのですよ。
 現実的なところに落ち着いたとみせて、割り切れない要素を残してあるのもいいですね。少女の印象的なキャラ造形とあいまって、どこか現実と幻想の狭間をたゆたうような感覚があります。

 入手難が続いていた本作ですが、なぜか最近格安で出回っています。今の内にお手にとってみてください。


●WEB拍手レス

この手の数値化ものだと、意外な人物が評価されていて驚きますね。
しかし惜しむらくはハンス・ウルリッヒ・ルーデル閣下のデータがないこと。
アンサイクロペディアでも評価されているのに、彼は(笑)

 ルーデル閣下はやけに人気高いですからねー
 伝説化されている面もありましょうし、意外と評価が難しいのかも。


>霙さんは成績優秀のイメージがあるのですよね
ひょうちゅうちゃんや吹雪ちゃんと互角に渡り合う霙姉さんを想像すると何故か吹きます(えー)

 天然で優等生とか最高じゃないですか。
 あと吹雪可愛いですよね。霙さんといい吹雪といい、ベビプリではインテリっぽいキャラが好みのようです。

投稿者: 日時: 21:54 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「国家論――日本社会をどう強化するか」

国家論―日本社会をどう強化するか (NHKブックス 1100)国家論―日本社会をどう強化するか (NHKブックス 1100)
佐藤 優

日本放送出版協会 2007-12
売り上げランキング : 679

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 気が付いたら出ていたので購入、即読了。
 良書です。連続講義の形をとっており、マルクス主義経済学や神学を援用して、社会とは何か、国家とは何か、国家がいかにして社会に関わっていくのかと説き起こす内容となっています。国家=暴力装置という前提からスタートしているため違和感を感じる人もいるかもしれませんが、位置設定が明確なため議論にブレがありません。

 佐藤優の著作では『ナショナリズムという迷宮』の流れでしょうか。ここ最近連続刊行されていた「インテリジェンスの技法を現実、中でもビジネスに応用する」系のものとは毛色が異なります。
 インテリジェンス絡みの話題も出てきますがほとんどおまけ程度であり、本題はマルクス主義と神学と言えるでしょう。かなりの部分が宇野経済学やロラン・バルト神学の講義に費やされており、選書のわりにはかなり読み応えあり。論理体系そのものは堅牢なため、内在論理を一度掴めばかなりすいすい読めます。個人的にはこれくらい硬派な方が好きです。結果的には読みやすいし理解しやすいので。

 終章に至ってどうにも雲を掴むような抽象的、倫理的な議論になってしまうのは少々残念ですが、題材の性質上致し方ないところでしょう。
 一番の魅力は、論理が首尾一貫しているために「何となく」の賛同や反論を許さないところですね。賛成するにせよ反対するにせよ、それが自分の思想的立場によるのなのか、事実認識によるのかという点を問われるからです。思想的な立脚点が異なればそもそも議論が成立しないという認識も大事ですね。

 これは余談なうえやや飛躍しますが、自称中立や自称現実主義者(あくまで自称の場合です)の言説がどうにも当てにならないことが多いのはこのためでしょう。あらゆる論理展開は、何らかの思想や立場に立脚せざるを得ないという認識は重要なように思います。
 難易度はやや高めながら、お勧め。値段も手頃ですし、一読する価値はあります。

 なお、例によって読書案内としても最適。バルト神学をちゃんと勉強しようという気持ちになりましたですよ。まずは『ローマ書講解』かな。


●WEB拍手レス

スーパーの店員として軸がブレている吹いたwwww
アッシュは格好良いんだか情けないんだかわからない辺りが魅力ですよねー。
個人的には幻の「フレディVSジェイソンVSアッシュ」とか見てみたいんですが、 まあ、誰が勝利しても大惨事だろうしなあ……。
ああ、でもアウレオールスならフレディやジェイソンがいても違和感はないような、あるような(笑)

 あれは是非とも見たいのですが、実現は絶望的でしょうねえ……
 スプラッタホラーとのクロスは一時期真剣に考えたのですが、誰を犠牲者にするかという問題があって断念しました。凛と士郎の搭乗した飛行機がクリスタルレイクに墜落して(ry というのも面白いかと思ったのですが。

投稿者: 日時: 21:11 | | コメント (0) | トラックバック (0)

『秘密の動物誌』復刊

秘密の動物誌 (ちくま学芸文庫 フ 28-1)秘密の動物誌 (ちくま学芸文庫 フ 28-1)
ジョアン・フォンクベルタ ペレ・フォルミゲーラ 管 啓次郎

筑摩書房 2007-11
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 学芸文庫にて復刊されました。ちくまさんいい仕事しすぎ。
 詳細については前に書いた読書録を参照してください。Wikipediaにも記述があります。
アフターマン』系の本が好きな方には絶対のお勧めですよ。是非に。


●今日のツインビー

コナミの新作シューティング「オトメディウス」にツインビーからマドカ参戦(WEB拍手より)

 おお、この作品のマドカはツインビーのマドカでしたか。未チェックでした。情報有り難うございます。
 そういやウィンビー国際的アイドル化計画という黒歴史もあったなあ……

投稿者: 日時: 16:57 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「せめて一時間だけでも」

せめて一時間だけでも―ホロコーストからの生還せめて一時間だけでも―ホロコーストからの生還
ペーター・シュナイダー 八木 輝明

慶應義塾大学出版会 2007-07
売り上げランキング : 131238

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 読了しました。
 ユダヤ人音楽家コンラート・ラテが、いかなる人々の助けを得て、いかにしてナチス迫害下を生き延びたかの記録です。やや薄手ながら重い一冊でした。手に取る価値はありますが、下手に読むと精神的にダメージを受けそうだ。

 本書の主役はコンラート・ラテ、そしてラテを助けた市井の人々です。ホロコースト下においてユダヤ人を救うべく行動を起こした無名の市民に焦点が当てられることは殆ど無かったため、その意味でも貴重な資料でしょう(近年ドイツで再評価が始まっているようですが)。
 著者と訳者が折に触れて強調しているように、本書はユダヤ人迫害やそれを静観した人々を肯定するものではありません。むしろ、出来うる限りの善意を奮い起こした方々の姿を記すことそれ自体が、百万言を費やそうとも座しているだけだったという事実への痛烈な批判となっています。

しかしナチスに追われ迫害された者に一片のパンを手渡し、家に泊めてやり、次の宿を手配することに必要なのは、品位と勇気と智恵であって、ただちに死の覚悟を要求するものではない

 本書序盤に記されたこの一節は言い知れぬ重い問いを私たちにつきつけます。
 倫理や信念を口にするのは驚くばかりに簡単です。立派な定見を表明するだけ表明しておきながらその実何もしないなど、誰にあっても日常茶飯事でありましょう。無論のこと私もそのような輩であり、他者を非難する資格などありはしません。まさに「罪なき者まづ石を擲て」です。「品位と勇気と智恵」を己のものとして発揮できる人がどれだけおりましょうか。

 はたして私は――私たちは、かような極限状態に置かれた時にいかなる行為を示すことが出来るのでしょうか?

投稿者: 日時: 23:56 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「文藝ガーリッシュ」

 深く静かに潜行しながら何かと支度中の今日この頃です。
 10月も半ばですし、年末まで気合いいれていくとしましょう。

 今日の読書はこちら。

文藝ガーリッシュ    素敵な本に選ばれたくて。文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて。
千野 帽子

河出書房新社 2006-10-17
売り上げランキング : 129828

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 文藝ガーリッシュとは何か?
 著者、千野帽子は「志は高く心は狭い文化系小娘(フイエット)のためのジャンル」と定義しています。つまりは、後書きにいわく「むかしの娯楽小説や少女小説、ライフスタイルエッセイ、そして最新の純文学。スヰートな蜜が致死量の毒と結合した」物語群のことでありましょう。

 本書は、69のガーリッシュな作品を紹介したブックガイド……というよりも読書案内です。連載時および発売時に相当話題になったにもかかわらず、不勉強にして読んでおりませんでした。今回手にとってみて、高い世評の理由を深く納得した次第です。
 尾崎翠、室生犀星、久世光彦、森茉莉、山尾悠子etc……と、作家の選定だけでたまらない人にはたまらないものがあるでしょう。純文学やミステリ、SFといった既存の枠組みにとらわれず、自らの感性と眼を頼りにガーリッシュというジャンルを織り上げる術は甘やかにして優しげ、適度な毒も含まれていてまことに蠱惑的です。

 事実、本書の肝は著者の語り口にあります。個々の物語の単なる紹介でも、愚にもつかない私見の垂れ流しでもなく、物語、著者、時代背景、時代を超えて関連する作品を、僅か見開き2頁にまとめる腕は凡手ではありません。文学理論の博士課程を終えているというのにも納得。

 ブックガイドは本来、未知の書への道標に留まるものではありません。優れたブックガイドを読むこと自体、貴重な読書体験となるのです。本書はまさしくそのような一冊でありましょう。
 案内書では『ファンタジー・ブックガイド』以来のヒットでした。しばらくは取り上げられた小説を読みあさる日々になりそうです、はい。

投稿者: 日時: 22:21 | | コメント (2) | トラックバック (0)

読書録「宗教改革の真実」

宗教改革の真実 (現代新書)宗教改革の真実 (現代新書)
永田 諒一

講談社 2004-03-21
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 宗教改革時代における民衆の生活を社会史の方法論で記した好著です。ものものしいタイトルのため身構えそうになりますが、記述は平易、構成も筋道が通っているため、予備知識無しで読みこなすことが出来るでしょう。

 宗教改革といえばかのマルティン・ルターを筆頭に当時の知識人がクローズアップされることが多いのですが、本書の主役はあくまで民衆です。活版印刷の普及が宗教改革運動を後押ししたと述べた後、書物の増大と文字の普及による民衆の意識の変化、素朴で敬虔だった民衆たち、信条の違いによるカトリックと宗教改革派(プロテスタントのこと)の対立と、当時の彼らの姿を様々な側面から活写してゆきます。

 本書の魅力は、当時の人々の生活や信条がいかにして変化したかを限定された資料を駆使して生き生きと描き出している点にありましょう。この手の本にありがちなもってまわった言い回しはありませんし、日本語も論理的で非常に読みやすい。社会史の面白さを堪能することが出来ます。

 巻末には参考文献が記されており、今後の読書の参考になります。新書サイズなのでお値段も手頃。お勧め。

 余談ながら

それらの行為(引用者注:宗教改革派が自分たちの神学から演繹した行動規範。結婚の可否など)を実践したり、支持することが宗教改革支持者の証となり、それらに反対したり、無視しようとする者は宗教改革の敵対者ということになる。そして、そのような行動規範は、誰にもわかる単純明快な党派区分の指標となった。(p. 88)

 との記述が印象的でした。
 今日でもよくある単純化ですね、これは……

●WEB拍手レス

興味持って調べてみたら、カレーってカニバリズムと関係深いんですねえ。ブッダで出汁を取ったとかまた面白い話を知れました。

 そ、そんな話が!?
 面白そうですねえ……私も調べてみよう。

投稿者: 日時: 19:41 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「グノーシス―古代キリスト教の“異端思想”」

グノーシス―古代キリスト教の“異端思想” (講談社選書メチエ)グノーシス―古代キリスト教の“異端思想” (講談社選書メチエ)
筒井 賢治

講談社 2004-10
売り上げランキング : 45342

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 読了。良書。
 日本語で読めるグノーシス主義入門書として優れています。

 グノーシス主義を要約すると、「人間は、偽りの神(多くはデミウルゴスと呼ばれる)が創造した不完全な世界の住人である。それゆえに、真なる霊的なものに目覚め、<至高神>のおわす天上の世界に帰らねばならない」となりましょうか。詳しくはWikipediaをご覧下さい。

 本書は、グノーシス主義が誕生した紀元二世紀の歴史的、思想史的背景を記述した後、ウァレンティノス派やバシレイデースといった主要学派の主張を概観しています。整った構成のため、読んでいて内容がすらすらと頭に入りますね。また、各派の創世神話を要約した図が文中に挿入されており、理解を助けてくれます。

 グノーシスに相通ずる思想を列挙するのではなく、あくまで初期キリスト教史の枠内でグノーシス主義をとらえ、その定義や歴史叙述を目指すというストイックな姿勢が印象的です。一見すると地味に思えますが、そのようなアプローチこそが有効なのではないでしょうか。著者の文章からは学ぶ所が多く、グノーシスと近世の思想行動を安易に結びつけることを批判するくだりは示唆に富みます。

 個人的には、グノーシスのような「異端」との戦いを通じ初期キリスト教が自らの教義を確立させていったという話が印象的でした。思想宗教もまた人の営みであることが良く解ります。

 索引と参考文献も充実。これからグノーシスを学ぶ人に最適の一冊かと。


●WEB拍手レス

「手首ラーメン」なら知っていますが、手首カレーは寡聞にして知りませんね。ただ最近カレーにネズミの糞が入るなどの異物混入事件がありましたから、案外その両方を混ぜた噂話ではないでしょうか。
一応貼っときます。「手首ラーメン」 あとこんなのもありました。
たしか、ヤクザ関係者でなんでそうなったのか忘れましたが証拠隠滅の為に煮込んでたのだか、隠してたのだかって、どっかのスレに書き込みが覚えがありますが、あれってラーメンだったかな?

 お二人とも情報有り難うございます。
 なるほど、手首ラーメンでしたか。そういえばオカルト板で読んだことがあった。
 異物混入事件と混ざった線はありそうですねー

ゴキブリといえばさすがに今年の猛暑には耐え切れなかったのか、玄関で2匹ほど干からびて死んでいたりしました。
ゴキすら葬る暑さとか洒落になりません

 今年の夏は死ぬかと思いました。
 ゴキが死ぬならそりゃ人は倒れますな……

不思議な事に、何日も生きるとか言いますけど、ホイホイに捕まると結構一日二日ぐらいで死にますよな。あのシートに殺虫成分でもあるんじゃろうか。

 調べてみたところ、殺虫成分は使用していないらしいです。
 水分が取れなくてコロリといくのかもしれません。

投稿者: 日時: 21:10 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「物語 中東の歴史」

物語 中東の歴史―オリエント5000年の光芒 (中公新書)物語 中東の歴史―オリエント5000年の光芒 (中公新書)
牟田口 義郎

中央公論新社 2001-06
売り上げランキング : 240459

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 当たりでした。
 中公新書の物語シリーズは全体的に出来が良いのですが(名著『物語 イタリアの歴史』の影響でしょうか)、本書もその例に漏れません。
 副題で「オリエント5000年の興亡」と銘打っているものの、メインはオスマン・トルコ帝国勃興直前までです。正確には「物語 アラブの歴史」と呼べましょう。
 中東と言えばイスラーム、と短絡せずに、シバの女王や、亡都パルミラ最後の主、美貌と才智をもってなる女王ゼノビアから話を始めているのが嬉しいところ。パルミラ滅亡を扱った第二章にはパルミラ地図まで付いており、参考になります。

 イスラーム登場以後は、ヨーロッパやモンゴルとの戦いを軸に、ヌールッディーンや、獅子心王リチャード最大のライバルサラーフッディーン(サラディン)ら、中世イスラーム世界を彩った人々が思い入れたっぷりに描き出されます。歴史的事実の記述にも手抜かりはありません。本書一冊で、11世紀から13世紀のイスラーム世界の流れを掴むことが出来るでしょう。

 もっとも、本書の主役は何といいましても、13世紀イスラーム世界の雄、独眼竜バイバルスです。トルコ系のマムルーク(奴隷と訳されることがありますが、ニュアンスはかなり違います)出身でありながら王朝を創始した傑物であり、自ら前線に立つ軍人でもありました。その軍才は傑出していたようで、当時世界最強だったモンゴル軍をも打ち破っています。
 日本ではマイナーな人物ですが、現地での人気はサラディンや千夜一夜物語で有名なハールーン・アッ=ラシードを上回るそうですね。この人物については殆ど知らなかったため、勉強になりました。
 それにしても見るからに逞しい戦士であり、軍事の天才であり、一代でスルタンにまで成り上がった英雄で、おまけに独眼だったとは。キャラが濃すぎる。

 近現代の扱いが薄いのが難点ですが、新書サイズということを考えれば仕方ない所でしょう。本書外の時代をカバーするために、『中東戦争全史』と併読するのがお勧めです。

 なお、本書で扱われている時代を語るには十字軍の存在が欠かせません。HISTORIAさんのコンテンツ十字軍とその時代 を参考に色々読んでみるのも面白いと思います。


●WEB拍手レス

『聚楽 太閤の錬金窟』は『信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス 』の続編的物語なので、先にそちらを読んだ方がいいかと…。

 おおう、続編的なものでありましたか……
『信長~』を探してきます。

投稿者: 日時: 21:56 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「戦場の精神史 武士道という幻影」

戦場の精神史  ~武士道という幻影 (NHK出版)戦場の精神史 ~武士道という幻影 (NHK出版)
佐伯 真一

NHK出版 2004-05-30
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 良書です。
 本書の主張を要約すれば


『武士道』とはフェアプレーと忠義の念を何よりも尊ぶ倫理観とされている。だが、この『武士道』は作り出された幻影である。平安期から戦国時代までの武士とは、夜討ち朝駆け、騙し討ちを常道とする存在だった。彼らにとって名誉とは戦場で手柄をあげ生き延びることであり、そのためにはいかなる手段を用いても敵を倒す必要があったのだ。味方に対しては誠実であったが、それも時と場合によるものだった。


 ということになりましょうか。

 頷ける主張です。
『武士道』というからには、『武士』がいなければなりません。しかし、武士という言葉はひどく曖昧です。太平の中にいた江戸時代の武士と、権謀術数渦巻く戦国時代の武士とでは、倫理観も価値観も全く異なりましょう。
 例えば、映画『ラスト・サムライ』で描かれた武士道は美しいものでありました。しかしそれは戦乱の時代を生き抜いた武士たちの有した『武士道』とは異質なものでしょう。
 歴史は連続していると同時に変化し続けます。社会環境も、人々の精神性も同様でしょう。『武士道』なる心性だけが古来より変わることなく存在したなどという発想は、考えてみれば妙なものです。

 議論の手続きは丁寧です。中世文学の専門家である著者は、多数の文献を引用し主張を裏付けてゆきます。専門家ならではの着実な議論は見習いたいところ。参考文献の記述が丁寧なのも良いですね。興味をもった箇所を手がかりに色々と調べ知識を深めることが出来ます。

 私たちの持つ『武士道』概念がいかにして形成されたかを解き明かす過程も興味深いです。江戸から明治大正昭和と、武士道が理想化され、やがて国民国家形成に利用されるプロセスが良く解ります。

 もっとも、本書の真価は『武士道』を幻影とし常識を否定する点にはありません。
 後半部、荒々しく現実的な処世術だった武士道が、太平の世の倫理観へと変遷する過程を通して著者は問いかけます。
 戦場の倫理は果たして平時の倫理たり得るのか。
 平時の精神性は、戦場のそれにどこまで由来するのか。
 著者が言うように、この問いかけは戦争一般に関する議論にまで通じます。安易な答えを出せる問いではありませんが、それだからこそ思索を促してくれると言えましょう。

 良質な議論と新しい視座を与えるのみならず、思索までも誘ってくれる好著です。
 興味のある方は是非ご一読を。

投稿者: 日時: 22:49 | | コメント (2) | トラックバック (0)

読書録「トワイライト・レディ」

トワイライト・レディトワイライト・レディ
菊地 秀行

集英社 1987-05
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 その(ひと)に関する最初の記憶は、窓の色だった


 という冒頭の一文からして素晴らしい短篇集。メイン・テーマが吸血鬼ということもあり、菊地秀行の叙情的な面が十二分に発揮された粒揃いの一冊となっております。

 収録作品は

・夕映えと夜を愛する少年「夕映えの女」
・演劇を主題とした耽美的な「薔薇戦争」
・高校卒業を目前とした不良少年の通過儀礼を描く「青い旅路」
・北国で紡がれる静謐な吸血譚「白い国から」

 の四作。
 元々『コバルト』に掲載された少女小説であるため、どれも浪漫的傾向が強いです。名短篇集『D―昏い夜想曲』に近い空気ですね。

 集中では「白い国から」が一番お気に入り。「私」の淡々としていながら叙情的な語り口がまことに魅力的です。抑制されたナレーションが今にも聞こえてきそうなほど。
 雪に埋もれた北国で教師を務める「私」、夜学校に転校してきた白い少女、降り積む雪の中佇む黒衣の男……全身の血を抜かれる怪事件や忽然と現れるマンションといった舞台装置と相まって、切ないほどに美しい作品世界が作り上げられています。

 未収録作品二つと書き下ろし一つを加えた短篇集『黄昏人の王国』も発売されていますが、私としてはやはり本書に愛着があります。めるへんめーかーの挿絵も素敵。

 残念ながら絶版ですが、容易に入手可能。
 浪漫的、叙情的な短篇が好きな方に強くおすすめします。

投稿者: 日時: 21:01 | | コメント (0) | トラックバック (0)

070708簡易読書録

 最近読んだ中で良かったものをまとめて。
 簡易読書録といったところです。

三島由紀夫『黒蜥蜴』(学研M文庫)

 三島の名戯曲が初の文庫化。ストーリーなどは有名ですね。Wikipediaにも詳しいです。
 三島は『文章読本』で戯曲の文体は「散文のやうなしっかりした形を離れて、融通無碍な、さうしてかつ流動し舞踏する独特な」ものであると述べています。本作はその最高度の実践例と言えましょう。
 端整でありながら修辞的、過剰なまでに装飾と陰影に溢れた長台詞はほとんど唯一無二のものでしょう。『わが友ヒットラー』と並び、声に出して読みたい戯曲です。巻末には三島と美輪明宏の対談他も収録されていてお得です。

ネルヴァル『暁の女王と精霊の王の物語』(角川文庫)

 フランスの狂詩人ジュラール・ド・ネルヴァルの長篇小説。澁澤龍彦も絶賛していた一品ですね。
 シバの女王とソロモンの恋を主題とした幻想譚であり、中村真一郎鏤骨の翻訳が素晴らしい。
 リバイバル出版なので旧字体、かつ印刷も掠れ気味です。またいい味出しているんだこれが。

シュテファン・ツワイク『ジョゼフ・フーシェ』(岩波文庫)

 シュテファン・ツワイクは旧来の表記。現在ではシュテファン・ツヴァイクが一般的でしょうか。『ナポレオン 獅子の時代』でも強烈な印象を残した、革命期フランスの政治家ジョゼフ・フーシェの評伝……ではありますが、異様なほど面白いです。臨場感溢れる筆致と劇的な展開は、まるで波瀾万丈の歴史小説を読むよう。「面白すぎる」と苦笑混じりに評されたのは伊達ではありません。
 例によってamazonでは無駄に高額ですが、新古書店や古書店の文庫棚で意外に見かけます。そちらを探すのがよろしいかと。

武田雅也『桃源郷の機械学』(学研M文庫)

 中国の文学、地理学、建築学、庭園などなど……中国の培ってきた文化伝承の中でも、ややオカルティズム的傾向を持つ題材を選んだ文章集。中国の宇宙論について述べた「中華風惑星カタログの旅」、ヨーロッパの博物学書に記された図像が中国でいかなる変遷を遂げたかを示す「八戒、その漂白の旅」など、魅力的な題材が山ほど盛り込まれています。博識ぶりが縦横無尽に発揮された好著。本書に限らず、武田雅也の著作はどれも良いです。翻訳書である『スキタイの子羊』もお勧め(スキタイの子羊に関しては叡智の禁断図書館さんのレビューも参考にしてください)。

小池壮彦『東京近郊怪奇スポット』(長崎出版)

 怪奇探偵小池壮彦初期の著作。見開きにつき一地域を扱っており、怪奇現象の概要、発生地点の地図、怨念の系譜、怪奇現象の頻度と恐怖度を記しています。怪奇現象の記録であると同時に、データベース的な性格も強いですね。充実度は高く、この本が元になった都市伝説もあるとか。
 amazonではやや高めですが、Yahooオークションなどで容易に入手可能です。

原田実『トンデモ日本史の真相』(文芸社)

 と学会本で久々のヒット。「秀吉は美濃墨俣に一夜城を築いた」「失われたアークは四国剣山にある」「アインシュタイン曰く日本は世界の盟主」など、日本史にまつわる怪しげで魅力的なテーマを検証しています。最初に巷説を示し、しかる後に真相を書くという形なので前提知識が無くても安心。真相については賛否があると思いますが、参考資料を示しているので検証も容易かと思われます。トンデモ関連本は最近不作だったので、このようなしっかりした本が出たのはファンとして嬉しい限り。
 個人的にポイントが高いのは松尾芭蕉隠密説。「忍者松尾芭蕉」ってちょっと格好良いな。

投稿者: 日時: 22:23 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「先生とわたし」

先生とわたし先生とわたし
四方田 犬彦

新潮社 2007-06
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 読了してしばらく経つ今でも心のどこかがざわめいています。なるほど、これは評判になるわけだ。
 比較文学者四方田犬彦が、恩師由良君美への思いを綴った長篇評論です。もっとも個人的には、評論というより史伝文学であるとの印象を受けております。詳細は新潮社のページを見て貰うとして雑感を。

 由良君美が徐々に精神の平衡を失うのを著者が知り行くくだりでは幾度となく本を閉じざるを得ませんでした。胸に響く、というよりも、ではなく、肺腑にずんと重いものが沈んだ感覚。

 由良がメフィストフェレス、老ファウスト、そしてウェルギリウスに擬せられているのはまことに象徴的であり、『ファウスト』や『神曲』をはじめて読んだ時に近しい感情を覚えます。本書に関しては、感動という言葉を安易に使いたくはありません。碩学への複雑で錯綜した、それでいて敬意と愛情に溢れた本書を手安い言葉で総括してしまうことは、知の営みと伝授に対する背信行為に他ならないでしょう。

 鶴見俊輔が「3、4日かけて読み終えたとき、率直にいって、涙がこぼれた。あれと比べられるのは、日本文学のなかでは鴎外の『渋江抽斎』ぐらいだ。隣りに並べても甲乙つけられない」と述べているのも納得です。もっとも、鴎外一流の沈着極まりない筆と異なり、文章の端々に隠しようのない感情の波が噴き出てはいるのですが。

わたしは自問する。はたして自分は現在に至るまで、由良君美のように真剣に弟子にむかって語りかけたことがあっただろうか。弟子に強い嫉妬と競争心を抱くまでに、自分の全存在を賭けた講義を続け、ために自分が傷つき過ちを犯すことを恐れないという決意を抱いていただろうか(p218)。

 帯にも記されたこの言葉のみならず、本書の端々は持続的な棘となって心に突き刺さり、やがて深い感動を呼ぶことでしょう。師弟関係や知の営みに心を動かされる方は是非とも読むべきです。
 装丁も瀟洒で、間違いなく2007年ベストクラスの一冊。読んで良かった。

投稿者: 日時: 22:49 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「激辛書評で知る 中国の政治・経済の虚実」

激辛書評で知る 中国の政治・経済の虚実激辛書評で知る 中国の政治・経済の虚実
矢吹 晋

日経BP社 2007-05-03
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 辛口の中国学者、矢吹晋による書評集。タイトルに一切の偽り無し。
 序文に

本書は中国について書かれた本を「批判的に読む」という作業を通じて、中国の実像に迫る方法を選んだ。いわば「話題の本によって、中国を読む」という試みだ。

 とありますが、まさにその言葉通りの一冊となっています。俎上に載せられるのは『マオ―誰も知らなかった毛沢東』、『中国を変えた男 江沢民』など多数。

 本書の凄さは二つあります。
 一つは、専門家ならではの鋭い知見と深い知識を活かした徹底的な書評を行っていること。特に第一部第一章『マオ―誰も知らなかった毛沢東』評ではそれが顕著。『マオ』そのものの問題点を一言一句おろそかにせずに追い詰め、返す刀で絶賛書評、「衝撃作」と繰り返すばかりの書評をも撫で斬りにしてゆきます。印象論ではなく、「どこが」「何故」間違っているのかを資料(無論、典拠付き)を引用して示しているため、説得力を欠くこともありません。舌鋒は厳しく、時に罵倒芸と言いたくなるほどですが、それが魅力的に見えてすらきます。

 二つめは、ただの書評で終わらず、扱った本を元にして説得力のある中国論を展開していること。
 例えば、『中国を変えた男 江沢民』を取り扱う第二章では、本の問題点や事実誤認を指摘した後、江沢民が何故一貫した反日スタンスを取るかについて解明しています。著者はそこに「漢奸トラウマ」を読み取っています(詳しくは本書をご覧下さい)。
 書評から江沢民論に至る流れは首尾一貫しており、優れた書評とは即ち一個の論と成り得ることを教えてくれます。

 著者の書評に対する姿勢は以下の言葉に良く表れています。

「やりとりが本当なら」と仮定法で逃げるのは卑劣である。これらのやりとりにおいての「真偽の判断をすること」が書評の責務である。もしその知識と能力を欠いているならば、「書評能力なし」と辞退するのが良識というものだ。(48ページ)

 大言壮語でなく、実践しているのが素晴らしい。それだけ自分の言葉に覚悟を持っているということだと思います。自分の発言は自分で責任を取るという心意気。
 中国という国に関心がある場合以上に、背筋を正した書評とは何か知る上でも読む価値はありましょう。

投稿者: 日時: 20:57 | | コメント (0) | トラックバック (0)

【お薦めの一冊】メディア・バイアス

メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学
松永 和紀

光文社 2007-04-17
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 かなりの良書です。光文社新書はさりげに良書が多いな。

 アマゾンさんを見ていただければ解るように、健康食品や科学報道におけるマスメディアの問題点を指摘した本ですね。
 世にはびこる健康情報に対し、常に信頼のおける資料にあたる姿勢を貫いているあたり偉い。これには著者が、農芸化学の専門的訓練を積んでいることも大きいのでしょう。

 何事も黒か白かで割り切ろうとする姿勢に異議を唱え、メディアの警鐘報道や添加物叩きに懐疑の目を向け、いわゆる自然志向、無農薬志向は必ずしも良いものではないと冷静に判断する著者の姿勢には、大いに学ぶものがあります。
 また、「あるある」捏造事件に際し、自分たちが行った安易な報道を棚に上げてバッシングに走った人々を告発するくだりには、行き場のない憤りが感じられます。

 非常にバランスがとれた記述を行っており、この種の批判本では出色の出来。特に、科学的に慎重な立場を取り「まとも」な事を書く科学ライターは食っていけないという部分には、ハッとさせられました。

 ただ、ちょっと気になったのがマスメディアの報道の扱い。
 著者の意見にはほぼ全面的に賛同しますし、偏向報道は問題だらけでしょう。
 ですが、発信という行為は、受け手がなければ成り立たないのです。丁寧で科学的な報道でなく、センセーショナルで受け入れやすい番組ばかりがもてはやされる傾向にも一考の余地はありましょう。
 一次資料や事実に真摯にあたる良心的な番組でなく、解りやすくお手軽な報道ばかりが歓迎される風潮もまた問題なのかもしれません。

 付け加えれば、本書を読んだ上で、マスコミを安易に「マスゴミ」呼ばわりするようでは、読んだ意味はありません。その場合、冷静に情報の真贋を判断し、信頼できる資料にあたろうとしないという意味では、本書で批判されている対象と何ら変わるところは無いのですから。
 大切なのは、正確な情報を手に入れるようつとめ、筋道立てて思考し、その思考を批判的に検討することなのでしょう。凡庸に聞こえますが、これが意外なほど難しいのは皆様ご存じの通りです。私自身も心がけないと。

投稿者: 日時: 21:14 | | コメント (0) | トラックバック (0)

070525の読書日記

 ブックオフで発見した『バーニーよ銃をとれ』が面白すぎてたまりません。

 あらすじは

 ローン地獄に悩む平凡なサラリーマン、バーニー。彼は二万ドルを安全確実に手に入れる計画を立案し、同じくローンに悩む二人の友人を引き込んだ。
 計画は首尾よく進み、バーニーたちの手元には無事二万ドルが転がり込む。だが、その金の真の持ち主が問題だった。名はリポル。カリブ海の島国の元独裁者であり、残虐非道で知られた男。彼が擁するのは、24人のプロフェッショナルからなる私設団体。遅かれ早かれ、リポルの手勢がバーニー達を襲うだろう。
 彼らに対抗すべく、バーニーは百戦錬磨の元軍曹を雇い即席の訓練を開始した。猶予はわずか一週間……


 といった調子。

 知力体力共に平々凡々なアマチュア3人 vs プロ中のプロ24人という構図だけで素晴らしい。圧倒的に強力な敵、素人を鍛える鬼軍曹、徐々に腕を上げる素人たちといった構図は、名作『パイナップル・アーミー』を思い出させます(出版は本書の方が遙かに先ですが)。
 登場人物たちはどことなくユーモラスであり、重苦しさはありません。良い意味で全篇を貫くドタバタ劇的な空気が最大の魅力でしょう。展開もスピード感に溢れており、一気に読んでしまいます。いわゆる徹夜本ですね。
 
 作者トニー・ケンリックは1970年代から80年代にかけて活躍しました。代表作に『スカイジャック』があります。
 1980年代後半からはシリアスなサスペンスへと活躍の場を移してしまったものの、その本領は本書のようなユーモア・ミステリーにありましょう。
 

●今日の本棚

佐藤優書店、開店

 ジュンク堂名物、作家書店が明日5/25より開店の模様です。今回の店主は佐藤優
 ページ下部には推薦書籍へのリンクが既にありますね。思想宗教中心なのは納得。
 トークセッションは既に満員のようですが、知らなかった本との出会いを求めて足を運ぶのも一興かと。私も行ってみよう。

投稿者: 日時: 22:05 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「ずっとお城で暮らしてる」

ずっとお城で暮らしてるずっとお城で暮らしてる
シャーリイ ジャクスン Shirley Jackson 山下 義之

学習研究社 1994-12
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 お茶でもいかがとコニーの誘い
 毒入りなのねとメリキャット……


 モダンホラーの女王シャーリィ・ジャクスンによる傑作。
 狂気を宿した女性を書かせればホラー界随一のシャーリィ・ジャクスンですが、本作はその筆がなお一層冴え渡っております。
 旧家ブラックウッド家の次女、メリキャット。村人たちから忌み嫌われる彼女が狂気を深め、ついには怪へと至る流れは最早名人芸です。名作『山荘綺談』も同趣向ですね。もっとも、本書には超自然的な要素は何一つありません。だからこそ怖い。

『ずっとお城で暮らしてる』の主舞台となる「お城」、即ちブラックウッド邸とそれを取り巻く環境は、客観的に見れば陰鬱な狂気の世界です。ですが、語り手たる狂女メリキャットにしてみれば、「お城」は夾雑物が一切入り込まない、入り込んではならない至福の閉鎖世界。そこに土足で入り込んでくる村人や従兄弟こそが排斥されるべきなのかもしれません。

 シャーリィ・ジャクスンの筆は冴えに冴えており、読み進める内にメリキャットの願う閉ざされて狂った世界が蠱惑的に感じられてきます。村人たちの陰湿ないじめのせいもあり、メリキャットの世界こそが正しく思えてくるかもしれません。事実、作品全体のトーンは奇妙な幸福感と明るさに包まれています。最後の一文は見事という他ない。

 古書店ではやや高めですが、新古書店やヤフオクで容易に手に入ります。
 お勧め。

●WEB拍手レス

自分は田中ロミオ大好きっこですが、神樹はあまり……でも、雰囲気とかは尿漏らしそうになるくらい好き。マヨイガー。マヨイガー。人造人間マヨイガー(勢いだけで生きてます)。
あと、陰陽座大人気だな、オイ。伝奇好き御用達。組曲・黒塚とか好き。あと妖花忍法帖と甲賀忍法帖は普通に好き。
無駄な事話しました。伝奇関係ねぇけど、ロミオ作品だと最果てのイマとかヤスさん好きそうかなぁと思う。ただ、俺のエロゲNo.1はCROSS†CHANNELだけど。

 明確に雰囲気作品ですからのう。だがそれがいい。
 最果てのイマもやってないですね。やらないと。

こんばんは。不躾ですが、庵主殿の影響で三津田信三氏の作品を読んでみようと思い至りました。もしよろしければ、読み初めにオススメの作品などありましたらご教授願えないでしょうか。全作品が未読なので『首無の如き祟るもの』を読むには少し不安があるのです。

 こんばんは。それでしたら『~もの』シリーズ第一作である『厭魅の如き憑くもの』がよろしいかと。首無に比べると文章は読みにくいものの、ホラーミステリとして高いレベルにある良作です。
 また、講談社ノベルズから純粋なホラーが数作出ています。ただ、それらは入手が少し困難かもしれません。ブックオフ型の新古書店を探すと見つかりやすいかと。

そういえば藤田和日郎先生の『邪眼は月輪に飛ぶ』はお読みになられましたでしょうか?
実にすばらしい『御伽噺』ですので、未読でしたら是非。

 連載時から読んでおりました。
 全編に渡り隙のない名作ですね、あれは。

どうも、稲生です。「神樹」は未プレイですが、人づてに泉鏡花的という評価を聞いていたので、是非ともヤス様の評価を聞きたいところです。
あとスレにあった「AYAME」もかなり素敵そうですわ。こういう物憂げで官能的な雰囲気も伝奇モノには合いそうな気がします。

 まだ途中ですが、文章と雰囲気は絶品です。山中孤界の怪異譚ということもあり、確かに鏡花的ですね。
 AYAMEは隠れた良作ですので是非プレイを。やや舌足らずな所もありますが、土俗的な湿度と古典的な品の良さを両立させたヒロイン、世界観は必見です。

投稿者: 日時: 21:39 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「首無の如き祟るもの」

首無の如き祟るもの首無の如き祟るもの
三津田 信三

原書房 2007-04
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 文句なしの傑作

 舞台は奥多摩の孤村、媛首村。村を支配するのは古き血族・秘守一族。戦中戦後という時代背景、田舎の村、旧家の一族という舞台装置から想像される通り、因習、怨恨、伝承がてんこ盛り。秘守一族間の呪術合戦、媛首村に伝わる祟り神・淡首様、正体不明の怪物・首無と、横溝的なキーワードがこれでもかこれでもかと繰り出されます。これらの描写では三津田信三得意のホラー描写が冴え渡っており、たまらない雰囲気を醸し出しております。

 とはいえ、あくまで本作はミステリです。事件部にも手抜きはありません。首無し屍体が戦中戦後の事件共にゴロゴロ転がり、それらの事件はいずれも三重四重の密室状況、関係者は皆アリバイがあるという大盤振る舞い。いわゆる「本格」ファンには垂涎ものかと。

 そして終盤。残りのページ数で山と積まれた伏線を消化できるのかと心配だったのですが、杞憂でした。目から鱗でしたよ。作中で探偵役が述べるように、ある一つの事実に気付くことであらゆる謎が消失するカタルシス。この解決には、優れたミステリ特有の、現実をぐるりと反転させてしまうような心地よさがあります。
 事件は解決したと思わせておいて、さらに二転三転する構成も心憎い。ミステリとホラーを融合させた解決部は見事です。

 世界設定や登場人物の一部は『厭魅の如き憑くもの』、『凶鳥の如き忌むもの』を引き継いでいるものの、関連性は薄く独立した作品として読むことが出来ます。

 文章は読みやすいですね。また、登場人物たちのアリバイや状況を一覧として纏めていることが可読性を高めています。伏線の配置、語り=騙りの手法、仕込みの上手さと、どれをとっても一級の作品。おそらく2007年ベスト級でしょう。

 繰り返しますが、紛れもない傑作。必読です。


●WEB拍手レス

クマムシの存在を初めて知ったのはゲノムでした。すげえや、ちゃんと学習漫画している! ゲノム=学習漫画!

 確かに学習漫画ですが、あれをそう呼んでいいのだろうかという疑問が……

投稿者: 日時: 10:18 | | コメント (0) | トラックバック (0)

読書録「クマムシ?!――小さな怪物」

クマムシ?!―小さな怪物クマムシ?!―小さな怪物
鈴木 忠

岩波書店 2006-08
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