カテゴリー:怪の図書庫

怪の図書庫:「妖怪事典」

妖怪事典妖怪事典
村上 健司

毎日新聞社 2000-04
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 タイトル通り、古今の文献にある妖怪について網羅した事典です。有名な事典であり、妖怪好きな方ならとうにご存じかもしれませんね。
 
 妖怪に関する資料はとにかく多い。本書のあとがきによれば、妖怪事典というくくりだけでも主要なものが複数あるほどです。『現行全国妖怪事典』(昭10)、『日本妖怪変化語彙』(昭50)、『全国妖怪事典』(平8)の3つですね。昨年には『萌え萌え妖怪事典』が発売されましたが、これは事典というより入門書なので割愛しましょう(好著なのでお勧めです)。
 かように文献が氾濫する中、あえて本書をお薦めする理由は三つあります。

 一つ。入手が容易、かつ情報量が極めて多い。
 二つ。文献資料を専門に扱っている。
 三つ。総合的なリファレンスと成り得る。

一点目についてはいわずもがな。amazonで24時間発送という入手の容易さは大きな武器です。同じ24時間発送でしたら『全国妖怪事典』の方がお手頃ですが、小学館ライブラリーで284ページというのがネック。事典という性質上、一定以上のボリュームは欲しいところです。その意味で、入手の容易さと情報量を兼ね備えた本書は最適解といえるのではないかと。

 二つめ。あとがきでも言及されていますが、今までの妖怪事典は、基本的に民俗学の資料に基づくものでした。怪談本や鳥山石燕による創作妖怪は収められていないのです。その点、本書は古代から現代に至るまでの多数の資料を収集し、妖怪に関する情報を抽出してまとめています。先日取り上げた『奇談異聞辞典』もそこに含まれていますね。いわば妖怪文献に関する良質な二次資料ということ。貴重です。

 何より大きいのが三つめです。
 amazonのレビューに「既に多量の資料を持つ人の調査・分類の手助けとなるものではないかと感じた」とありますがまさにその通りでして、複数の資料を比較検討する際に大いに役立ちます。
 例えば「ヌエ」の項目を見てみましょう。『古事記』に書かれた凶鳥ヌエにはじまり、源頼政によるヌエ退治まで言及されています。これだけでもヌエについて知るには十分なのですが、そのうえ、参考資料として『続妖異博物館』『神話伝説辞典』など複数が並記されています。このため、個別にあたり、ヌエならヌエの概念やイメージの変遷について追うことが可能となっているのですね。
 いわば「ヌエ」についてWikipediaを調べたら、詳しい解説に加えて元資料への丁寧なリンクが貼られていたようなもの。その利便性は言うに及ばずでしょう。

 この内容で約4000円は破格といえます。是非ともお手元にどうぞ。


●WEB拍手レス

ふと、デカレンジャーの記事が過去にあったことを思い出して、送信です。
今年のスーパー戦隊「侍戦隊シンケンジャー」、おおいにおすすめです!
脚本は、龍騎や電王、タイムレンジャーの小林靖子女史。
水戸黄門でおなじみの伊吹吾郎氏をレギュラーにキャスティングというガチっぷりに、まだ序盤ながら名シリーズの気配がチラリと……?
ちなみに次回(明日!)のサブタイトルは
「夜話情涙川」
これで、「よわなさけなみだがわ」とか。
お手すきでしたら、是非どうぞでございます。

 シンケンジャーは凄いことになっておりますね。司令官が伊吹吾郎て。
 ラスボスは魔界転生した伊吹吾郎に違いないと確信しております。
 ああ、山田風太郎的忍法や朝鮮妖術が出ないものか(出ません)。

日本の人魚って基本的に半魚人ですね。あれです。きっと、ふんぐるい・むぐるうなふ的な世界なんですよ。だから、宵闇眩燈草紙で出てきた和製インスマウスとかの可能性が。もうあれ、大好き。
でも、「海に棲む女性の姿をした妖」というのがいないわけでもなく、磯女とかそんなのが居たような気がしました。
ちゅーか、古今東西の「女性の妖」の話を見ると「美女の姿で男を誘惑して食う」とか「美女の姿で大事な物を奪うと結婚出来る」とかまったくなんという俺たちwwwという感じなんですがそこんとこヤスさん的にはどうなんでしょうか?

 あらゆる物語の原型は古代に出尽くしているとも言われますしねー
 妖女や異類に誘惑されてもう大変なことに、というのは神話の時代から連綿と続いております。まさしく人間の業。というか我々の業。
 まああれです。異類萌えは昔からの定番なのですよ。多分。

すみません、ちょっとお尋ねしたいのですが、
もしかしてヤスさんは、2chのvip板にやる夫もので
長編スレを立てていたことが御座いませんか?
間違ってたら申し訳ありません。

 やる夫スレはROMです。
 楽しみにしているシリーズは幾つもありますが、書いたことはないですね。

投稿者: 日時: 22:30 | | コメント (0) | トラックバック (0)

怪の図書庫:「悪霊館」

悪霊館 -サイモン・マースデン写真集 (Pan‐Exotica)悪霊館 -サイモン・マースデン写真集 (Pan‐Exotica)
サイモン・マースデン

河出書房新社 2006-08-29
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 幽霊屋敷。
 何とも魅惑的な響きです。幽霊屋敷一口にいいましても零シリーズに登場するような和風屋敷、名作『シャイニング』の幽霊ホテル、サイレントヒル風のゴーストタウンなど、その形状は様々といえます。

 しかし、幽霊屋敷の代表格といえばやはり、古式ゆかしい壮麗な館や城となりましょう。本書『悪霊館』で取り上げられているのは、まさにそのような幽霊屋敷――悪霊館ばかりです。収録された館の数は実に60。大型本ということもあり、迫力満点です。先日ご紹介した『倫敦幽霊紳士録』と併読すると素敵かもしれませんね。

 写真はすべて赤外線写真であり、モノクロかセピア調となっているため、とにかく雰囲気があります。青空の下ですら暗鬱な空気が漂っているように思えるのは錯覚でもないのでしょう。

 撮影されているのはイングランド/アイルランドでも曰く付きで知られる建物ばかり。呪術と肉欲に耽っていた修道院長が生きたまま壁に塗り込められたというソーントン修道院(リンク先は英語版Wiki。写真あり)、頭巾を被り長い髪をした女の幽霊が川沿いに出没するバーブレック館、そして、イングランドで最も有名な幽霊屋敷、あのボーリィ牧師館(本書ではボーレイ牧師館と表記)などなど、名前の響きだけで恐怖と興奮を呼び起こしてくれます。同世代の方なら『いる? いない? の秘密』でボーリィ牧師館をご存じかもしれませんね。

 個人的には、17世紀の強欲判事、ジャン・トレジーグルが彷徨うというハーミッツ・チャペルの写真がお気に入り。教会のものだったと思しき一枚の壁が、荒涼としたムーアに屹立する様は荘重ですらあります。

 著者サイモン・マースデンはイギリスの写真家。1969年から写真家としてのキャリアをスタートし、赤外線写真を用いた独特の作風を誇ります。廃虚や霊域を撮り続けていることで知られており、その作品は高い評価を得ていますね。ホームページ(英語)にも写真が掲載されています。
 廃虚好き、幽霊屋敷愛好家、怪奇幻想党には必携の一冊と申せましょう。また、Oblivionの僧院や廃虚といったダンジョンに惹かれる方にもお勧め。

投稿者: 日時: 21:13 | | コメント (0) | トラックバック (0)

怪の図書庫:「倫敦幽霊紳士録」

倫敦幽霊紳士録倫敦幽霊紳士録
John A. Brooks 南条 竹則 松村 伸一

リブロポート 1993-06
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 霧の都、ロンドン。
 英國の首都たるこの都市は実に多彩な顔を持ちます。ニューヨーク、東京、パリと並ぶ世界四大都市の一つにして、欧州経済の拠点という大経済都市。同時に、産業革命の拠点ともなった歴史的な都市でありますね。

 そして何より、ロンドンは世界屈指の恐怖の都であります。とりわけ幽霊に関しては他の追随を許さないといえましょう。ロンドン塔、チャーチルの亡霊が彷徨うと噂される首相官邸、「アルビオンの死の木」こと絞首台にまつわる無数の怪事……枚挙に暇がありません。

 本書『倫敦幽霊紳士録』ロンドン全域に点在する幽霊スポットを取り上げ解説した――つまりは「地球の歩き方 ロンドン幽霊篇」とでも言うべき一冊です。かの切り裂きジャックが活躍したイースト・エンドに始まりロンドン南部に辿り着くまで、まさに心霊スポット尽くし。
 試みに「ウェストミンスター」のページを開いてみると

ウェストミンスターに出る幽霊の中で一番有名なのは「ベネディクトゥス神父」である。この幽霊はウェストミンスター大寺院に出るが、主に夕方の五時から六時の間、中庭を囲む回廊に好んであらわれる。(p. 248)

 との記述があります。
 続けて『モーニング・ポスト』紙が神父の幽霊出現を奉じた記事、ウェストミンスター・ローマカトリック教会に出没する「黒衣の幽霊」、ウェストミンスター橋の「橋に近付いてき、その下をくぐるように見えるのだが、反対側に姿を現すことはない」お化けボートなどなど……まさに幽霊譚のオンパレード。
 索引および主要な幽霊スポットを網羅したロンドン地図も付されており、怪異目当てにロンドンを訪れるなら必携の一冊と申せましょう。

 なお、素敵なのが訳者後書きのエピソード。
 仏文学者にして詩人、超常現象本の執筆者としても知られた平野威馬雄が幽霊見物のためロンドン旅行に向かった時のことです。ある店員に観光で来たのかと尋ねられ、「いや、幽霊を見に来た」と答えたところ、店員は紙切れに所番地を書き付け「ここは、わたしの知っている××という家だが、この家には本物の幽霊が出る。是非行ってごらん」と言ったとのことで……さすがに違う。欧州最強の魔都は伊達ではないようです。

 出版社倒産につき絶版ですが、入手は比較的容易です。マーケットプレイスにも格安で出ているようなので、資料に一冊いかがでしょうか。眺めているだけでも楽しいですよ。

●今日の荒山徹

森宗意軒神社

 ちょっと行ってみたい。
 森宗意軒といえば、時代伝奇小説の金字塔、魔界転生のボスキャラですな。
 しかし神社の解説文に「江戸初期の兵学者・由井正雪の妖術の師ともいわれる」とある時点で凄い。

神無月本舗さん、冬コミにて

 ゲエー、ノッカラノウムの面
 完成度が高すぎる。コミケで販売しないかな。迷わず買うのですが。

投稿者: 日時: 19:40 | | コメント (0) | トラックバック (0)

怪の図書庫:「シャーマンの世界」

シャーマンの世界 (「人類の知恵」双書)シャーマンの世界 (「人類の知恵」双書)
Piers Vitebsky 岩坂 彰

創元社 1996-11
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霊に追われるイメージはときに性的な色合いを帯びる。先にソーラ族の女性シャーマンが地下界で近親結婚をして力を得る例に触れたが、シベリアと中国の境界付近に住むナナイ(ゴルド)族の男性シャーマンの場合、病気の間に美しい女性がやってきて、このように告げる。「私があなたを選んだ霊です。あなたの祖先にもかつてシャーマンになるように私が伝えました。今度はあなたの番です。老いたシャーマンは死に、いま、人々を癒す者がいません……。私はあなたを愛していますから、私の夫にならなければなりません。守護霊を与えましょう。あなたが人々を癒すのを助けるでしょう……。これに従わないと――私があなたを殺すことになります」。(pp. 57- 58)

 ……のっけからヤンデレ気味な台詞で恐縮ですが、これは本書『シャーマンの世界』で紹介されているエピソードです。先日もご紹介しましたが、シャーマニズムとシャーマンについて手際よく解説した好著と申せましょう。

 章立ては以下の通り。

・第一章:シャーマンの世界観
・第二章:土地ごとの伝統
・第三章:シャーマンへの道
・第四章:シャーマンの癒し
・第五章:現代のシャーマニズム。

 見ての通り、シャーマニズムについて広範にカバーしています。本文は百八十頁とやや薄手ですが、それだけに密度は濃い。フルカラーかつ写真や図版が充実しているため、眺めているだけでも楽しいです。

 本書ではシャーマンを

シャーマンとは基本的には、みずからのコントロールの下に魂を異界に飛ばし、ふつうの人々には見えにくい霊と交渉することで、この世のさまざまな問題を解決する人々である。(p. 6)

 と定義しています。
 憑霊――つまりは、死者や霊魂が依り代に乗り移る現象と区別しているのがポイントでしょう。憑霊された側は一般的に霊の意志に従うのに対し、シャーマンはあくまで霊魂をコントロールするものです。この違いは二つの混同を避ける上で重要であり、押さえておきたいところ。

 この定義に基づき、シャーマンについて多面的に紹介しています。「守護霊と死」「霊との戦い」「音楽、踊り、呪文」など、いかにもな項目が満載。シャーマン個々人のトランス経験やエピソードも多く盛り込まれており(冒頭はその一例です)、シャーマニズムの基本を楽しみながら理解できるようになっています。
 各項目が見開き数ページで完結するため、拾い読みするだけでも面白い。また、シャーマンの呪術、呪文、幻覚剤などについても触れられているため、調べ物や創作等の資料としても有用です。

 なお、シャーマンを単なる神秘的な存在として扱っていないのが興味深い。

「シャーマンもやはり、社会的、文化的状況の中に置かれている(p. 11)」「シャーマン的行動は国家権力の中枢との関係に強く依存しており(p. 41)」等の記述や「シャーマンと政治」という項目が設けられていることから、シャーマンをあくまで社会的な存在の一つとして扱っているのがわかります。意外と無視されがちな点でして、無闇に神秘主義的傾向に陥らないためには大事なことでしょう。エリアーデの『シャーマニズム』についても批判的に言及されています。

 関連して興味深かったのが、シャーマンの用いる駆け引き技術について。

 カナダはクワキュート族のケサリドなる男は、シャーマンなどインチキだと考えており、その化けの皮を剥がしてやろうとしました。そのために学んだのは、気を失った振りの仕方、思いどおりに吐く方法、毛玉を用いて病を癒すトリックなどの技術。ケサリドはこれらの技を用い、シャーマンとしての活動を行い、それがまったくうまくいくのを知ってやりきれなくなります。彼は「偽」シャーマンたちのインチキを暴くと同時に、大シャーマンとしての名声を得ていたのですが、ある頃から考えが変わり……という話。

 ケサリドの意識が具体的にどう変わったのかは本をご覧いただくとして、シャーマンという役割の意味と意義が伝わる変化となっています。

 巻末の資料編も充実。出典、索引、参考文献、民族についての説明の他、シャーマニズム運動を実践している団体の連絡先まで揃っています。本書を手がかりとして、シャーマニズムについての勉強を進めることも出来ましょう。
 表面だけなぞった入門書や怪しげなサブカル本とは一味も二味も違う本書、シャーマニズムに興味があるならば勿論、そうでない方も手にとってみてはいかがでしょうか。

投稿者: 日時: 22:24 | | コメント (0) | トラックバック (0)

怪の図書庫:「召喚の蛮名 学園奇覯譚」

召喚の蛮名―学園奇覯譚 (Beam comix)召喚の蛮名―学園奇覯譚 (Beam comix)
槻城 ゆう子

エンターブレイン 2002-12
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<あらすじ>

 主人公、栃草緋不美はどこにでもいる普通の女子高生。だが、ひょんなことから変わり者ばかりが集う「神智科」に編入することになってしまう。神智科で学ぶのはギリシャ語、ラテン語、ヘブライ語、隠秘学に数秘術(ゲマトリア)。そして教材は「エイボンの書」や「ナコト写本」といった魔導書の数々。そう、神智科は本物の「魔法使い」養成コースだったのだ。右も左もわからぬ新生活の導き手は、クラス委員長の無愛想少年・天野。緋不美の学園生活は果たしてどうなってしまうのか?


 RPGマガジンで連載されていた学園オカルトラブコメディです。オカルトといっても山ほどありますが、本作の主題はいわゆる西洋魔術、そして、みんな大好きクトゥルフ神話。これだけでお好きな方にはたまらないでしょう。
 本作の特徴は、オカルト成分がとにかく本格的だという点にあります。それらしいガジェットを使っただけ、ではない。緋不美が教師に魂の行方を尋ねた際の答えが

魂の行方が知りたいんでしょう? 自分で見てきて是非私に教えてもらいたい。その時のためにも貴女の身体はフランシーヌ(デカルトの娘)よろしく精密な機械人形として保存しておきますからね。

 ですよ。デカルトの人形幻想+異端科学とは、素晴らしい。
 登場人物の会話は万事が万事この調子です。まさか学園ラブコメで「大達人(アデプタスメジャー)」なる言葉を見るとは思いませんでしたよ。そのくせ緋不美と天野の触れ合い、すれ違い、微妙な距離感をしっかりと描いているのが何ともまた。無垢で素直な緋不美、狷介で無愛想な天野という対比がいい味を出しています。

 なお、本作においては、クトゥルフ神話のアイドル・這い寄る混沌ナイアルラトホテップが重要な役割を担っています。出番こそ多くありませんが、緋不美を時に惑わし、時に導く様は千の顔を持つ無貌の神に相応しい。ナイアルラトホテップの多面性を描いているという意味でも優れた作品といえましょう。

 amazonではマーケットプレイスのみのようですが、新古書店やオークションで容易に手にはいると思います。お勧め。

投稿者: 日時: 21:07 | | コメント (0) | トラックバック (0)
 

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