読書録『WORLD WAR Z』

WORLD WAR ZWORLD WAR Z
浜野アキオ

文藝春秋 2010-04
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 一言でいうと傑作です。
 ゾンビを真っ正面から扱った小説としてはベスト級でしょう。金字塔と言っていい。これほどまでに面白く、ページをめくる手が止まらない小説を読んだのは久々でした。

 発売からこのかた、一部界隈で大人気のようですが当然ですね。私の周囲をみている限りでは『1Q84』以上のベストセラーに思えてくるほどです(私も所属するボードゲーム集団「戦慄のマッド軍団」においては読書率七割を超えています)。

 ゾンビと人類の一大決戦たる「世界Z戦争」、その戦争を生き延びた人々へのインタビューという形式がいい。北極圏からアフリカまで、ホワイトハウスの元幹部から両親に連れられて北極圏に疎開した子供まで、舞台も人物も、彼らの置かれた状況も多種多様です。登場人物にしても、最前線で血反吐を吐きながらゾンビ相手に死闘を繰り広げる兵士から、パニックを利用して巨万の富を築いた商売人まで、性別国籍職業倫理観がまったく違う人々が次から次へと出てきます。この手法が世界規模の戦争という設定にリアリティと深みを与えていますね。

 ゾンビ出現から戦争終結まで、どのエピソードをとっても読みごたえがあるのですが、中でも日本編は飛ばしております。盲目の庭師・朝永先生の超人ぶりは必読。あの人だけ明らかに世界観が違う。ブレインデッドの神父もびっくりのゾンビ無双でしたよ。朝永率いる「盾の会」だけで一本作れそうです。
 各国の事情が書き込まれているのも読みどころかと。イスラエルはゾンビの出現にいち早く対応したのですが、その理由が1973年の大失策(*1)にあったというのは納得です。また、キューバの変化には思わずうなった。

 繰り返しますが、傑作です。この内容とボリューム(500ぺージ近いです)で2000円はお買い得でしょう。ゾンビ好きは無論のこと、小説を愛する方も必読です。五つ星のお勧め。

*1:第四次中東戦争のこと。当時、シリアとエジプトはイスラエルへの攻撃を計画していた。イスラエルの諜報機関モサドはこの事実を掴み報告していたが、時の政府はそれを軽視。結果、イスラエルはかつてない消耗線を強いられ、建国以来の不敗神話も崩壊した。


<あわせて読みたい>
ウェットワーク:ロメロ三部作の設定を踏襲し、さらにスケールアップした終末もの。主人公がプロフェッショナルな工作員なので冒険小説的な醍醐味もあり。
死霊たちの宴:ゾンビをテーマにしたアンソロジー。上記『ウェットワーク』の原型となった短編も収録されています。
ゾンビ映画大事典:ゾンビ映画データベースの最高峰。質量ともにこれを超えるものは当分現れないでしょう。2003年までのゾンビ映画を体系的に網羅しています。必携。
中東戦争全史:中東戦争の歴史と背景を手堅くまとめた好著。中東戦争入門として絶好の一冊です。「世界Z戦争」におけるイスラエルの対応を理解するためにどうぞ。

投稿者: 日時: 2010年05月15日 14:45 Web拍手

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