読書録「中国学の歩み 二十世紀のシノロジー」

中国学の歩み―二十世紀のシノロジー (あじあブックス)中国学の歩み―二十世紀のシノロジー (あじあブックス)

大修館書店 1999-12
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 これはいい。かなりの良書です。
 タイトルの通り、二十世紀中国学の展開を追った概説書ですね。主たる対象は二十世紀前半。殷王朝の存在が明らかになったこと、および敦煌文献の発見をきっかけに、世界各地で中国学が大躍進した時代です。

 本書は「中国の中国学」「日本の中国学」「欧米の中国学」の三章を柱としています。それぞれについて二十世紀に到るまでの中国研究史(日本では「漢学」と呼ばれていました)、重要な研究者(巻末に人物小伝あり)、政治的背景が研究に与えた影響(例えば中国では辛亥革命により伝統的な四書五経教育が大打撃を受けています)などなど、広範な目配りがされており読みやすい。大学の授業を元にしているためか、バランスのとれた叙述がなされています。200ページに満たないやや薄手の一冊のため、手軽に読めるのも嬉しいところ。

 薄手とはいえ中身は濃いです。索引も完備されていますし、記述も無味乾燥一辺倒ではない。中国学というのは細部が魅力的なのですが、本書も例外ではありません。
 例えば敦煌文献をフランスに持ち帰った研究者、ポール・ペリオ。敦煌文献を短期間に精選し逸品ばかりを選び出した人物ですが、彼が文献学者を志していたことはあまり知られていません。文献収集への熱意と、類まれな語学力を併せ持った彼だったからこそ、敦煌文献の真価を見抜くことが出来たともいえます。そのあたりについてきっちり書かれているのも読みどころ。なお、ペリオについては、黌門客さんによるポール・ペリオの無断(?)引用もご参照ください。

 個人的には、1314年、イタリアのキリスト教宣教師オドリコ・ダ・ボルディノーネが三年間中国に留まったエピソードが面白かったですね。彼の著書『オドリコの東方奇聞』(『オドリコの紀行』とも)には、纏足や鵜飼などが記録されているとのこと。読んでみたい。

 かように、中国学を知るうえで有用、読み物としても面白いという一冊です。お値段も手頃ですし、是非どうぞ。

投稿者: 日時: 2010年05月23日 21:58 Web拍手

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コメント: 読書録「中国学の歩み 二十世紀のシノロジー」

 拙文の、というか、当該記事は引用だけというのが申しわけないくらいなのですが、ご紹介くださり、どうもありがとうございます。

 『中国学の歩み』は未見でしたが(記事を拝読し、大いに「そそられる」ところがございました)、あじあブックスには興味をひかれる本が多いですよね。現在も、地味ながら刊行されつづけていますが(最新刊は『中国のことわざ』でしたっけ)、『漢学者はいかに生きたか』とか『漢字を語る』とか『闘蟋』とか、わすれがたい書物もすくなからずあります。

投稿者 higonosuke | 2010年05月31日 16:49

当庵においでくださりありがとうございます。黌門客さんには常々学ばせていただいております。

あじあブックスは良書が多いですね。普通の書店ではあまり見かけないのが残念。東洋文庫と並べて揃えたいものです。

投稿者 ヤス | 2010年06月01日 00:07

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