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傑作。無類に面白い。
嵐山光三郎の自伝的大河青春小説です。舞台は1960年代の新宿。もはや戦後ではなく、高度経済成長は目の前であり、若者たちを揺るがした学生運動の波が高まりつつあった時代です。戦後日本の疾風怒濤期といえましょう。
本書は、この伝説的な時代において、英介青年が多彩な人々と出会い成長していくという筋を持っています。典型的なビルドゥングスロマンですね。ただし、英介が出会うのは市井の賢人やら優雅な華族といった大人しいものではなく、60年代を席巻した「大人物、中人物、小人物、妖怪、奇人、天才、怪物、超獣、博士」たちなのですが。
実名で登場する人物、実に数百名。その顔触れが凄まじい。英介の周囲には、「寺山修二飼育計画」で出会い英介の親友となる唐十郎を筆頭に、山野浩一、麿赤児、村松友視、篠山紀信、南伸坊、糸井重里ら、そうそうたる面子が集い、怪気炎を上げ、去っていきます。彼らが仰ぎ見るは、寺山修二、三島由紀夫、澁澤龍彦、種村季弘、加藤郁乎ら、当時の文壇のヒーローたち。
やがて平凡社(当時は絶頂期にありました。「札束を刷っている」と言われたほどです)に入社した英介を待っていたのは、「書かざること林達夫のごとし」林達夫、民俗学者・谷川健一、檀一雄、そして深沢七郎……名前をあげていくだけでも胸がときめきます。
彼らが繰り広げる60年代文化、およびアングラ文化の一大狂想曲こそ、本書最大の読みどころと言えましょう。何せ、当事者の一人であった嵐山光三郎が活写するのですからつまらないわけがない。
平凡社の描写もたまりません。昼時には音楽雑誌の編集者が吹くフルートの音が響き、労働組合の事務所では「酔ったまま会社に戻り、社長室わきの水風呂へ背広ごと入り、朝まで水の中で眠ってしまった」男が朝からウィスキーを傾け、「あまりに詩人すぎたため」突如として蒸発し日本中を放浪していた詩人のハジメさんが池袋のパチンコ店から連れ戻される……まさしく梁山泊、圧倒的なエネルギーに満ちた空間の描写は圧巻の一言です。
新潮社版、新風社版共に絶版。ですが、新古書店やマーケットプレイスで容易に見つかると思います。
お勧め。
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