読書録「アマテラスの誕生」

アマテラスの誕生―古代王権の源流を探る (岩波新書)アマテラスの誕生―古代王権の源流を探る (岩波新書)
溝口 睦子

岩波書店 2009-01
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 日本の神様といえば誰を思い出すでしょうか。イザナミ、イザナギ、スサノオ、アメノウズメ、ヒルコ、そんな名前がすぐに浮かびます。八百万の神々とまで言われるように、その数はまさに膨大、神話や歴史に少しでも興味がある方ならいくらでも挙げることが出来るでしょう。
 その中にあって太陽神アマテラスオオミカミこそが最も有名であることは間違いありますまい。そして彼女が日本の国家神であり最高神であることにも。

『アマテラスの誕生 古代王権の源流を探る』はそんな常識を引っ繰り返してくれる好著です。
 主張を要約すれば以下のようになりましょう。古代、アマテラスは最高神ではなかった。七世紀以前に最高神・国家神とされたのはタカミムスヒなる神であり、そして彼こそが天孫降臨神話の真の主役であった。一方のアマテラスは、日本――倭国にあまねく存在していた地方神の一柱に過ぎなかったと。

 耳を疑いたくなる話です。アマテラスが一番偉いんじゃないのか。そもそもタカミムスヒなんて神様は聞いたこともない。かなり神話に詳しい方でもなければそう反応するのが普通でしょう。しかるべき論証が欲しくなります。
 著者に手抜かりはありません。天孫降臨神話の成立と大陸からの輸入経緯、タカミムスヒが国家神であると考えられる理由、一介の地方神にすぎなかったアマテラス像の変遷など、日本神話がいかにして変容していったかを、国家の動向と絡めて丁寧に論じています。特に第五章「国家神アマテラスの誕生」は必読でしょう。氏族制度から律令制への移行に際し、なぜアマテラスが国家神に選ばれたのか。なぜタカミムスヒは失脚したのか。スリリングな論集と推論が繰り広げられています。
「詳細は他書に譲るが」な箇所も多いですが、新書という性質上仕方ないところでしょう。引用・参考文献は完備されているのでご安心下さい。

 本書を読んで、久しぶりに歴史の楽しさを思い出しました。
 歴史を学ぶというのは、本来とても楽しいことです。マクロな視点で歴史のうねりをとらえる。政治的・国際的背景と文化発展との関わりに思いを巡らし、文化文明の背景を複層的にとらえる。年表や人名を覚えるだけの作業とは全く異なる、真の知的興奮がそこにはあります。本書や『十二世紀ルネサンス』によって、その一端に触れることが出来るのではないでしょうか。

 密度の濃い一冊ですが、文体は平易です。また、定説と著者の意見とが明確に区別されているのがいいですね。事実と意見との峻別は基本ながら難しいだけに参考になります。レポート等を書く上でも参考になると思います。

投稿者: 日時: 2009年02月09日 22:05 Web拍手

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