たった一つ必要なもの――読書録「だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ」

だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだだれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ
都築 響一

晶文社 2008-02
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 優れた書評に必要なものは多くない。
 もしかすると、一つしかないのかもしれない。

 本書『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』はそんなことを思わせてくれる書評集です。著者は都築響一。『TOKYO STYLE』や『珍日本紀行』で知られる写真家にして編集者ですね。
 書評というのは難しい。かの「狐」こと山村修は、書評家が陥る「暗くて陰湿な穴」について語っています。続く一節を引用しましょう。

この穴のなかで書かれる書評は、けっして読者に向かって本を差し出そうというものではありません。逆に、本を閉ざそうとするものです。本を閉ざして、なにを語るのかといえば、自分のことです。自分の教養、自分の眼力のことです。(『もっと、狐の書評』343ページ)

 本書はそのような書評とは正反対の位相にあります。何せ、都築響一がしているのは、出会った本について眼を輝かせて語ることなのですから。

 取り上げられた大半は、「ベストセラー・リストにも平積み台にも縁がない」本です。
 事故現場の手向け花を撮影し続けた『国道一号線の手向け花』、あらゆる犯罪記事を要約し掲載する季刊紙『犯罪月報』、モンゴロイドを被写体とした写真集的学術書『異民族へのまなざし――古写真に刻まれたモンゴロイド』など、余程の好事家でなければ手に取る機会もないでしょう。

 都築響一は、そんな本を取り上げる。お仕着せではない。出版社推薦ではない。「話題の一冊!」などではあり得ない。
 彼が行うのは、ただ自らが探し、出会った本について語り紹介することです。どこか、好きな友人について語る行為にも似ている。それゆえに、本書は卓抜した「本の本」となり得ている。
 もしかすると「書評」という呼び方は不適切かもしれません。友人を賢しらに「評する」者がおりましょうか。

 そうなのです。
 書評に必要なのは教養、眼力、見識……そんなものではない。ましてや毒舌自慢の辛口などであるはずがない。ただ、評する本を好きであることが第一なのです。
 好きになれば語りたくなります。そして、その語りは常に人の心を打つ。都築響一のような優れた文章家の手になるものならば、なおさらでしょう。

 本を、読書を愛する方は、是非とも手にとってください。


<関連リンク>
空気なんか読むなLynceusさんによる書評。「世にも幸福な書評集」という表現が素晴らしい)

投稿者: 日時: 2008年12月17日 21:12 Web拍手

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コメント: たった一つ必要なもの――読書録「だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ」

ご紹介ありがとうございます。
いい本でしたね。

投稿者 lynceus | 2009年01月04日 17:05

はじめまして。お越し下さり有り難うございます。
本当にいい本でした。昨年の「本の本」では一番のお気に入りです。
それにしても晶文社は本当に好著揃いだと思います。出る本出る本全部欲しくなる。

投稿者 ヤス | 2009年01月06日 23:39

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