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2008年12月のアーカイブ
ついに大晦日。西暦二〇〇八年、平成二十年、皇紀二六六八年も本日で終わりです。幸いにして来年を無事に迎えることが出来そうだ。
当庵も今年の更新はここまで。日々訪問してくださる方々には感謝の言葉もございません。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
●今日のオカルト板系
残念ながら更新は停止しているようですが、充実。情報のみならず該当する画像を掲載しているのが有り難い。淡々としたレイアウトが雰囲気を出しています。
心霊写真といえば昔テレビで見たものが印象に残っていまして。小学校だか中学校だかを写した航空写真なんですね。で、学校横の森から巨大な顔が覗いているというもの。
もしかしたらとサイトを探していたら……ありましたよ。
これだこれ。いやあ、当時は怖かったなあ。今見ると何とも微妙な感じがしますが。
部屋に居るモノ毎に纏められています。読みやすい。
978氏の経験がいい話でちょっと和んだ。
●今日の復活
角川ホラー文庫に収録されていた妖怪博士ジョン・サイレンスが新訳にて復活。アルジャーノン・ブラックウッドの代表作ですね。オカルト版シャーロック・ホームズとでもいうべき本編は探偵小説とオカルト小説がミックスされた独自の魅力を持っています。これは要チェックだ。
●WEB拍手レス
おお!「魂の行方」の回が収録されてるRPGマガジンは、本棚に安置されてます。表紙はCCさくらちゃんでした。
ちょっと感動(?)。
あれはいい作品なので単行本も是非。
しかしCCさくらとは……時代を感じますなあ。
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RPGマガジンで連載されていた学園オカルトラブコメディです。オカルトといっても山ほどありますが、本作の主題はいわゆる西洋魔術、そして、みんな大好きクトゥルフ神話。これだけでお好きな方にはたまらないでしょう。
本作の特徴は、オカルト成分がとにかく本格的だという点にあります。それらしいガジェットを使っただけ、ではない。緋不美が教師に魂の行方を尋ねた際の答えが
魂の行方が知りたいんでしょう? 自分で見てきて是非私に教えてもらいたい。その時のためにも貴女の身体はフランシーヌ よろしく精密な機械人形として保存しておきますからね。
ですよ。デカルトの人形幻想+異端科学とは、素晴らしい。
登場人物の会話は万事が万事この調子です。まさか学園ラブコメで「
なお、本作においては、クトゥルフ神話のアイドル・這い寄る混沌ナイアルラトホテップが重要な役割を担っています。出番こそ多くありませんが、緋不美を時に惑わし、時に導く様は千の顔を持つ無貌の神に相応しい。ナイアルラトホテップの多面性を描いているという意味でも優れた作品といえましょう。
amazonではマーケットプレイスのみのようですが、新古書店やオークションで容易に手にはいると思います。お勧め。
荒川洋治のエッセイ集『忘れられる過去』を繙いていたら、以下のような分類に出くわしました。
・趣味は読書、の人
・本好き
・読書家
・読書人
・蔵書家
・愛書家
それぞれの定義が興味深い。
一番上は「趣味? えーと、まあ読書かな」な人、本好きはあくまで趣味の一つとして本をそれなりに読む人。ベストセラーや話題作を実際に手にとってみるタイプでしょうか。
読書家は「収入の五パーセント以上を本代にあてる」、読書人は「ひとり書斎にこもって本を読むイメージ」とのこと。後者には文語的、学究的な響きがありますね。蔵書家と愛書家については言うに及ばずでしょう。
愛書家は「好きな本を、心をこめて」読み、「量より質を重んじる」そうで、これが一番上質なのかな。
私はせいぜいが読書家でしょうか。読書人というには学が足りないし、蔵書家には程遠い。いわんや愛書家をや。読書の道は遠いなあ。
皆様はどれに当てはまるのでしょうか。コメントなりとでお聞かせ願えると幸いです。
●明日のコミケ
鎧が織りなす狂気の世界をお確かめください。
V林田さんの原稿が何というかもうね……
●今日のボードゲーム
致死性のウィルスを食い止めろ! という、復活の日でアンドロメダ病原体なゲーム内容の模様。これは面白そうだ。
次回のマッド軍団例会に持っていきたいところです。人気高でやや入手困難なのがネックかな。
●今日の本棚
哲学者であり名随筆家でもあった森有正に関する著作のデータベース。これはいい。読書の道標となりそうです。
今となっては森有正を読む人も減っていそうだなあ。明晰、硬質、論理的、それでいながら流れるような文体は比類がないものですよ。森有正の随筆を読むたび、澄んだ河川、それも欧州のものを連想します。
代表作「バビロンの流れのほとりにて」は『森有正エッセー集成』に収められていますのでご一読を。しかし新刊書店で入手できるのが第一巻のみとは……悲しくなるな。
●今日の投げ捨てろ
■プラハ窓外投擲事件
凄いネーミングだ。
や、真面目な事件だというのはわかっているのですが。
これに憤ったフス派の勢力はプラハの市庁舎を襲撃し、ドイツ人市長と市参事会員を窓から投げ捨てたとされる。これが第一次プラハ窓外投擲事件である。これが1415年。
プラハ城を襲った民衆によって王の使者である国王顧問官2名と書記の3名が窓から投げ落とされた事件。こちらは1618年ですな。
1948年の第三次窓外投擲事件は後味が悪いので省略。
それにしても多すぎる。投げ捨てるのがそんなに好きか。
ちょっくらネットラジオを聞きながらあれこれやってきます。
そういえば明日からはコミケですな。私は参加出来ないのですが、行かれる方は楽しんできてください。今年は冷え込みがきついようですし、体調にだけはご注意を……
●今日の深海生物
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フランスやアメリカで話題を呼んだ深海生物写真集です。前にK(仮称)さんが英語版を紹介されていたような。
そのうち買おうと思っていたのですが、邦訳が出ていたことに今頃気付きました。なんという不覚……!
こちらでその一部が紹介されています。発色がよさそうですな。お値段も写真集にしてはそれなりですし、これは買わねばなるまいて。
長いものを読む気力がどうにも沸かずエッセイや随筆を再読していたのですが、『花迷宮』は矢張り良いですな。
『花迷宮』は久世光彦最初期のエッセイ集です。自らの過去の想い出を軸に、浪漫的なテーマについて語るというスタイルはこの頃から一貫していますね。例によって端整かつ色気のある文章が頁を真っ黒に塗り潰しているのがたまらない。
取り上げられた主題は夾竹桃、西条八十、宝塚のかぐや姫など、魅力的なものばかり。中でも、夏目漱石について語った「されど漱石」が素晴らしい。読むたびに溜息をついてしまいます。
迷亭の、知っていても人生のどんな役にも立たないだろう知識というものが、私にはすごく垢抜けたものに思えたのである。いま確かに思うのだが、私はあのころからずっと『猫』の迷亭に憧れて来た。だから、知識は遊びだと思っているところが、私にはいまでもある。人のまじめな話を端から茶化し、嘘の上にもっと大きな嘘を重ね、どうでもいいデティルに偏執的にまで拘泥り、何を考えているかさっぱりわからない。そういう人に私はなりたかったのである。
知識とはかくあるべし。
私も見習いたいものです。
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●今日の注目作
たとえば,松本零士の名作『男おいどん』に出てくる「サルマタケ」に対して,著者は Coprinus sarmata という学名を提示している(pp. 111-113:個人的には準主役である「トリさん」の学名も知りたいところ)
これは買わざるを得ない。平凡社はいい本だすなあ。
余談ですが、『男おいどん』に比べいまいちマイナーな『聖凡人伝』もお忘れ無く。男おいどんから悲哀を取り去り乱痴気分を増量したという、ある意味で「四畳半もの」の究極型です。私にとってはバイブルの一つ。
●今日のべびプリ
一ヶ月と少しぶりの霙姉さんでした。考えてみれば年末とは一年の終わり、まさにテロスであり、我らが霙姉さんがトリを飾るのも必然でしょう。
それにしてもこの方はいつも美味しいところを持っていくな。いざという時頼りになるだけのことはある。
読書ペースが滞り気味です。
うーん、油断するとすぐ読まなくなるな。いやまあ、昨日から3Dカスタム少女XPを弄っていたせいもあるのですが。
とにかくポーズエディタが面白すぎます。複数のキャラを画面上に出せるため、素材さえあればかなりのシチュエーションが再現可能。MODも大変充実しており(職人さんに感謝)、ついつい時間を忘れてキャラを作ってしまいますね。思わず人体解剖図引っ張り出してしまいましたよ。こうなると精巧なフィギュアも欲しくなってくるな。
ゲームの性質上、18禁なシチュにも対応、というかそちらが本来の用途。おかげで当庵にはちょっと載せられないスクリーンショットが溜まっていきます……
●今日の正月
水筒さんのTwitterより。
こういう福袋は初見ですな。面白いかも。中身がわかっているので福袋といえるか微妙ではありますが。
久保田万太郎セットはちょっと欲しい。
●今日の宇宙世紀
ガンダムUCのライバルMS機がついに登場。装飾的な鎧を思わせるフォルムが良すぎる……
これは数年ぶりにMGに手を出してしまうかもしれません。
クリスマスイヴですね。お約束なのでしっとマスクを貼っておきます。某スレで毎年恒例の二次元クリマス部屋晒しもやっておりますな。うーむ、ここまでくると風物詩だな。
まあ私はいつも通りに過ごしているのですが。色々とやることはあるにせよ、今夜くらいは山積みの本と仕舞い込んだ酒を手にゆっくり過ごすとします。光源は高島野十郎の「蝋燭」で決まりだな。
ちなみに高島野十郎は明治後期から昭和にかけて活動した画家です。生涯独身を貫き、画壇に属することなくただひたすら写実的な画を描き続けました。孤高、という言葉がこれほど似合う人もいないでしょう。代表作「蝋燭」は、久世光彦『怖い絵』の表紙にもなっておりますね。
作品の多くは福岡県立美術館に所蔵されており、また、今年の三月には画集が出版されています。お手にとってみてはいかがでしょうか。
●今日の新刊
■ウェッジ文庫の新刊は『ベンガルの憂愁』および『新編 燈火頬杖』
また渋いところを……
特に『燈火頬杖』は嬉しい。浅見淵最後の著作にして随筆集であり、高い評価を受けながらも長い間品切れでした。それを文庫で出してくれるとは。
『東海道品川宿』しかり『彼もまた神の愛でし子か』しかり、ウェッジ文庫は文人趣味の持ち主にはたまらない存在となりつつあります。今最も注目すべき文庫といえましょう。
前から読みたかった『パラドックス大全』が安かったので購入。まだ積ん読の段階なのですが、「囚人のジレンマ」「ベリーの逆説」「ゼノンの逆説」「トリストラム・シャンディの逆説」といった響きだけで御飯三杯はいけます。いや、大好きなんですよパラドックス。
せっかくなので、ちょっとだれか面白いパラドックス教えてくれ。とWikipediaの項目を貼っておきますね。
しかし積本が増えてきたなあ。『カバラ ユダヤ神秘思想の系譜』、『普遍の鍵』、『錬金術とストラディヴァリ』等々、重量級の人文書複数が途中で止まっている状態です。これ以上増やすとまずそうだ。
●今日のTRPG
■第135回ゲーマーズ・フィールドコンベンション(年忘れコン)先行発売&サイン会のお知らせ(ニュース・トピックスよりリンク)
おお、『QuickStart!!』の先行販売が。TRPG主題にしたゲーマー必見の萌え四コマですな。これは欲しいかも。
●WEB拍手レス
ここ最近の怒涛の連続更新と本の紹介が嬉しいです。お薦めされてた『もっと、狐の書評』を手に取ったのですが、これはいい本でした。あまりこの手の本は読んでなかったので。普段読みそうもないタイトルの本もこうして紹介されるとすごく楽しそうに見えますね。
出来るだけ更新していきたいと思います。何年も連続更新をしていらっしゃる方は本当に尊敬ですよ。
「狐」の書評はどれもいいです。『<狐>が選んだ入門書』も好著ですよ。
やっぱりPCが危険な感じです。ファンはやかましいわ、妙な音がするわ、ブラウザやエディタの反応まで時々ひっかかる始末。これは時間の問題かな。
これを機にHDDを買い換えようかと調べてみたら、1TBで8000円を切っているのですね。安くなったなあ。40MBで数万円していた時代が嘘のようだ。
年末だし近々買いに行ってくるつもりです。いやまあ、気が付いたら同価格帯の『言語と沈黙』を手にしている可能性もありますが。
『言語と沈黙』はジョージ・スタイナーの代表作。四方田犬彦『人間を守る読書』で知ったのですが、それ以来読みたくて仕方ないのですよ。
多少長いですが該当箇所を引用。
――表題の「人間を守る読書」とはどういう意味ですか?
これは批評家のジョージ・スタイナーが『言語と沈黙』(せりか書房)のなかで唱えていた言葉です。
彼はオーストリア系ユダヤ人としてパリに生まれたのですが、ナチスの迫害を怖れ、ニューヨークに逃れました。少年期にナチスの組織的な暴力を身近に感じたことから、「人間というのはもはや守られなくなってしまった存在である。われわれは生きているのではなく生き残っているにすぎないんだ」という認識を持つにいたり、「だからこそ、そういう野蛮な時代には読書が人間を守る側に立たなければならない。野蛮で暴力的でない側に人間を置くために必要なんだ」と唱えたわけです。アウシュヴィッツの絶滅収容所の所長が夕べにはリルケの詩を鑑賞し、朝になるとガス室へ出勤していたという事実を前に、人間は文化をもう一度定義し直さなければならないというのが、彼の立場です。(p. 7)
実に深い。この部分を読むだけで『人間を守る読書』及び『言語と沈黙』を手に取りたくなります。
なお、『人間を守る読書』の「前書きにかえて」と「後記」はもしかすると本文と同じか、それ以上に魅力的なフレーズに溢れています。そこだけでも読む価値有りかと。
●今日のズボン
■「天と美駿のアニメがんばるぞ!」 第7回「ストライクウィッチーズ」(好き好き大好きっさんより)
我らが竹井10日先生の新作コラム。
当庵としては「仕事が暇になったら、勝手にストライクウィッチーズTRPGを作って角川書店に持ち込もうと画策している」との一文に注目せざるを得ません。
世界設定的には十分いけるのですよね、実際。ネウロイは敵として扱いやすいですし、PCをウィッチとするなら何をすればいいかも非常に明確ですし。本当に出してくれないものだろうか。
今年は年末も年始もなさそうな予感。
●今日の博物学
■伊藤若冲の大作「象鯨図屏風」が発見される(見もの・読みもの日記さんより)
これは見たい。伊藤若冲といえば名著『奇想の系譜』で一躍知られるようになった江戸の大画家ですね。
当時は鯨猟が盛んであり、江戸の人々にとって馴染み深い生き物だったようです。そのためか、鯨を扱った絵図は意外なほど多い。九州大学の鯨絵・捕鯨史料で当時の史料を閲覧できます。
しかし鯨と象の対比という構図はダイナミックだなあ。
●今日の眩しかった日のこと
先月末には始まっていたのですな。我ながらアンテナ低いのう。
ご存じの通り、ナルキッソスは片岡とも氏によるビジュアルノベルですね。フリーソフトとは思えない完成度を誇る名作なので未プレイの方は是非やるといいと思います。作風は『銀色』系なのでそこだけ注意。凹んでいる時にプレイすると多大なダメージを負う可能性が……
●今日のホラー
これは欲しい。
マッド軍団の例会で被りたいところだな。
蝦夷地別件が読んでも読んでも終わりません。何といっても新潮文庫五百頁強で上中下巻ですよ。いや滅法面白いので長いのは嬉しいのですが。
それにしても読み進めるにつれて辛くなってきます。何せテーマはあの、クナシリ・メナシの戦い。敗北とその後の悲劇が約束されているだけに胃が……
●今日のオカ板
■未解決事件2chまとめ@Wiki(Firefoxでは正常に表示されないようなので注意)
しばらく見ない内に移転しておりました。旧Wikiはこちら。Wiki前はテンプレが矢鱈と充実していたスレでしたね。
しかし怖い。洒落にならないほど怖い話とは違ったベクトルの怖さだ。後ろを振り向くのがなんか厭になるのですよな。
●今日の朝鮮妖術
待ってましたの荒山徹特集ですよ。
「検索ワードは 朝鮮妖術、朝鮮柳生、捏造、柳生宗矩、柳生十兵衛、柳生友景、柳生友矩、臨海君、光海君、檀君」とのことで楽しみにせざるを得ません。友矩はやはり若竹でジンゴイズなんだろうか。
それにしても柳生矩香(柳生薔薇剣の主役たる女性剣士)が美しい。流石伝奇時代小説最強の姉キャラだ。『柳生薔薇剣』は姉萌え小説として宣伝しても十分いけると思います。
昨日のカウンターがやけに回っています。アクセス解析を見ると普段とそんなに変わらないのですが……何だろう。
それはそうと道満晴明先生の『最後の性本能と水爆戦』が発売されています。
何といいましても深海系異形少女クトゥルーもの「ルルイエから来た少女」が入っているのが嬉しい。下半身が魚介類の少女「村長」とその秘書スガワラの一夜の逢瀬を描いた絶品です。大好きなんですよこれ。
短篇集なのでじっくりゆっくり楽しむのがお勧めです。
●今日の現代異能伝奇
納得。小池スレは本当に目利きの集まりだな。
参考までに映画版の歌詞。
●今日のTRPG
やる夫シリーズでTRPGという、ありそうで無かった試み。お題は『異界戦記カオスフレア』となっております。
それにしても麻呂が良GMすぎる。
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優れた書評に必要なものは多くない。
もしかすると、一つしかないのかもしれない。
本書『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』はそんなことを思わせてくれる書評集です。著者は都築響一。『TOKYO STYLE』や『珍日本紀行』で知られる写真家にして編集者ですね。
書評というのは難しい。かの「狐」こと山村修は、書評家が陥る「暗くて陰湿な穴」について語っています。続く一節を引用しましょう。
この穴のなかで書かれる書評は、けっして読者に向かって本を差し出そうというものではありません。逆に、本を閉ざそうとするものです。本を閉ざして、なにを語るのかといえば、自分のことです。自分の教養、自分の眼力のことです。(『もっと、狐の書評』343ページ)
本書はそのような書評とは正反対の位相にあります。何せ、都築響一がしているのは、出会った本について眼を輝かせて語ることなのですから。
取り上げられた大半は、「ベストセラー・リストにも平積み台にも縁がない」本です。
事故現場の手向け花を撮影し続けた『国道一号線の手向け花』、あらゆる犯罪記事を要約し掲載する季刊紙『犯罪月報』、モンゴロイドを被写体とした写真集的学術書『異民族へのまなざし――古写真に刻まれたモンゴロイド』など、余程の好事家でなければ手に取る機会もないでしょう。
都築響一は、そんな本を取り上げる。お仕着せではない。出版社推薦ではない。「話題の一冊!」などではあり得ない。
彼が行うのは、ただ自らが探し、出会った本について語り紹介することです。どこか、好きな友人について語る行為にも似ている。それゆえに、本書は卓抜した「本の本」となり得ている。
もしかすると「書評」という呼び方は不適切かもしれません。友人を賢しらに「評する」者がおりましょうか。
そうなのです。
書評に必要なのは教養、眼力、見識……そんなものではない。ましてや毒舌自慢の辛口などであるはずがない。ただ、評する本を好きであることが第一なのです。
好きになれば語りたくなります。そして、その語りは常に人の心を打つ。都築響一のような優れた文章家の手になるものならば、なおさらでしょう。
本を、読書を愛する方は、是非とも手にとってください。
鎧もの、という言葉をご存じでしょうか。
1980年代に世を席巻したある種の作品群の俗称です。少年少女たちが鎧を纏って恥ずかしい台詞を吐きながら激闘を繰り広げる……つまりは『聖闘士星矢』『天空戦記シュラト』『鎧伝サムライトルーパー』等のことですね。
大ヒット作品を連発し、一世を風靡したというに相応しい巨大ジャンルでした。
流行りものの悲しさ、数年を経ずしてその勢いは衰えました。90年代後半にB'T Xがそれなりのヒットを示しましたが、それとて最後の蝋燭のようなもの。今となっては完全に「死んだ」ジャンルであり、復権の兆しは見えません。
しかし、歴史は繰り返すもの。何が再び流行るかなど誰にもわかりません。映画にせよコミックにせよリバイバル全盛の昨今、鎧ものから学ぶことは大いにあるといえましょう。
そう、今や鎧こそが問題なのです。多分。
何が言いたいかと申しますと、randam_butterさんの新刊は『鎧YEAR』だということです。
テーマはむろん「鎧」。テキスト同人誌なのに100ページ超というボリューム、個性豊かすぎる参加メンバー(知る人ぞ知る鬼才・瓜仁成も登場)、そして表紙は我らがヒライ塾長による「セントジュエルサーガ第一章」図解と、全てにおいて掟破りな一冊となっております。
ブースは3日目、東地区のK-37b。冬コミに行かれる方、一冊いかがでしょう。私もちょっとだけ書かせていただいております。
●今日のヘタレ
HDDはガリガリ鳴るわ、グラフィックボードのファンは唸るわと、PCがピンチ気味です。バックアップ取って置くべきだなこりゃ。画像類はともかく、テキストファイルが飛んだら泣くに泣けません。
●今日の映画
■作家スティーブン・キングが選ぶ、米タイム誌の08年ベスト10
塾長のところより。
ガチガチの名作ばかりで固めないのはさすがキングと言わざるを得ません。8位の"The Ruins"はタイトルからして「いかにも」ですが、ホラーSHOX [呪]さんによれば、期待通りの内容の模様。うーん、見たい。
なお、キングの好みについて知りたい方は『死の舞踏 ホラー・キングの恐怖読本』をどうぞ。僕らのキング先生がホラーと映画と小説について700ページに渡り語ってくれます。滅多斬りとしか呼べない辛口批評も山盛りですが、そこにすらホラーへの愛が強く感じられるのがいい。
<関連リンク>
・Wikipedia――スティーブン・キング
>また作家仲間とロックバンドを組んでおり、そのバンドのモットーは「メタリカが小説を書くのと同じくらい上手く演奏する」である
いい話だ。
モダンホラーの女王ことシャーリィ・ジャクスンの『丘の屋敷』が出ていることに今日気付きました。なんたる不覚。
ジャクスンの未訳長篇なんてあったかな、と首をひねりましたが、よく見れば原題は"The Haunting of Hill House"――つまりは幽霊屋敷ものの古典たる『山荘綺談』(あるいは『たたり』)の新訳なのですな。
『ずっとお城で暮らしてる』に続き本作までとは、創元推理文庫流石としか言い様がありません。『くじ』も新本で手にはいるし、絶版だらけだった少し前が嘘のようだ。
この調子で『野蛮人の生活』や『こちらへいらっしゃい』の復刊も是非お願いいたします。ついでにマシスンの『地獄の家』も。
<関連リンク>
・『くじ』(ジャクスンの代表作が翻訳されています)
・ウィンチェスター・ミステリー・ハウス公式ページ(英語。幽霊屋敷といえばやっぱりここかと)
「誰かが私に言ったのだ 世界は言葉で出来ていると」
津原泰水の『綺譚集』が文庫になるようです。12月後半には本屋に並ぶ模様。『異形コレクション』収録作を中心に、十五篇が収録されています。
断言しますが、『綺譚集』はオールタイムベスト級の傑作短篇集です。ホラー、怪奇文芸、幻想文学を愛するならば、何を差し置いても手に取るべき一冊と確信します。
一口に傑作といっても色々あります。『綺譚集』最大の魅力はひとえにその文章でしょう。とにかく一篇一篇の密度が尋常ではない。句読点一つおろそかにしない凝集度は時として息苦しくなるほどです。多種多様なイメージを言語に凝結させ、最終的に独特の世界を構築する手腕は並外れています。津原泰水といえば怪しいまでの文章力で知られますが、その作品群にあってもベスト3に入るのではないでしょうか。
論より証拠。幾つかの作品から冒頭を引用してみましょう。
「天使解体」
三回忌がまる三年目になってしまったが、その程度で腹を立てる亡父ではあるまい。昨年の今頃は母が入院していたし、以後も長子たる私が、生まれて初めて経験する原稿依頼の殺到に、呑まれ、揉まれて、無我夢中でいた。
「古傷と太陽」
俺の番か。困ったな。君らみたいに得意のネタの持ち合わせはないんだ。それに君らが話してきたのは、本当は本で読んだり映画で見た話ばかりだろ? 誤解するな。悪いと言っているんじゃない
「玄い森の底から」
さんざっぱら我慢に我慢を重ねた青春だったっていうのになんでそのうえこんな汚い場所で犯されながら殺されなきゃいけないんだろうと思うと涙や洟水があとからあとから溢れ出して耳のなかや髪のなかまで流れ込んできた。花火のにおいがする。夏が終わる。始まりはいつも夏の終わりだ。
私小説風の端整さがある「天使解体」、ざっくばらんな語り口の「古傷と太陽」、息の長い饒舌体「玄い森の底から」と、作品毎に異なる文体と技法を駆使しているのがおわかりいただけると思います。十五篇全てにおいてこの調子であり、弛緩した文体など一つもありません。それでいながら、これぞ津原泰水と呼ぶしかない色と匂いが確かに在る。
澁澤龍彦は「神秘や怪奇を美に変ずる言語の力、あり得べからざる一つの状況設定から、一篇のロマネスクを組み立てようとする人工的な物語作者の意志」を称揚していますが(『暗黒のメルヘン』464ページ)、『綺譚集』こそは其の意志が結晶した一冊といえましょう。
四の五の語る作品ではありません。ただ味わい、酔いしれてください。
必読です。
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「ほんたった」が予想以上に便利で歓喜の昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。
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「ほんたった」はいわゆるブックスタンド、書見台です。
最大の特徴は携帯用の折り畳み式というところ。普段はamazonリンクで表示されているようなコンパクトサイズなのですが、展開させることで文庫本からA4版までに対応した書見台となります。
こんな感じ。
裏から見たところ。
ちなみに載せているのは『初心者のためのサンスクリット辞典』です。千円札一枚で買えるという、コストパフォーマンス最高のサンスクリット語辞典。一冊持っておくと何かと便利ですね。
書見台とはいうものの、本を読むにはあまり使っていません。書中の文を書き写す用途が大半です。ノートに書くにしろ、キーボードで打ち込むにしろ、両手があくので本当に便利になりますね。頁を重しでおさえておく必要もありません。
折り畳み式という性質上多少グラつきますが、慣れでどうにでもなる範疇でしょう。エレコムのブックスタンド等と併用してもいいと思います。
値段も手頃ですし、一つ持っておいても損はないかと。
なお、詳しいスペックや写真は、発売元であるエジソンのサイトにありますのでそちらをご覧下さい。
「デッドライジングのフランク・ウェストさんってハーバードっておじいさんとかいたりせんのかのう」
その発想はなかったわ。
死体甦生者ならぬ死体破壊者フランク・ウェストですね。
●今日の読書
定期的に祭りを開催してくれるちくまですが、今回もやってくれております。
12月は大植物学者牧野富太郎の『植物記』、古代ペルシャの名詩集『ルバイヤット』(ルバイヤートとも)。1月になるとタイトルだけでたまらない『世界の奇妙な博物館』、そしてちくま日本文学全集は夢野久作と、涎が出そうなラインナップ。
そしてなんと、山本義隆による『熱学思想の史的展開』が文庫になっております。
山本義隆といえば駿台の名物講師にして、湯川秀樹にその才を惜しまれたと伝わる物理学者です。科学史家としても知られ、2003年には『磁力と重力の発見』が大きな話題を呼びましたね。
『熱学思想の史的展開』は80年代の著作であり、熱力学の科学史を説いた一冊です。名著として知られていたものの長い間入手困難であり、古書も高値がついていました。文庫という形で再刊されたのは嬉しい限り。
この本で物理をゼロからスタート、というには少々辛いかもしれませんが、物理アレルギーの無い方ならば読んで損無しでしょう。私も買ってこよう。
森銑三・柴田宵曲による『書物』が12/16に重版再開されるようです。
碩学二人が「書物」について縦横無尽に語った名随筆ですね。一篇一篇は短いながらも書物への愛に満ちており、俗臭を感じさせません。文章は薫り高く、枯淡の域に達しています。
森銑三は言います。「ただ読みたいから読む。書物が好きだから読むというだけの漫然たる読方をしている場合が多いようである」と。
翻って書店の店頭に積み上がる勉強本や読書本を覗けば「目的を持て」「役に立つところを読め」「本を道具として利用しろ」の大合唱。なるほど、一手ではあり十分に意義もありましょうが(良書も少なくありませんしね)、猫も杓子もビジネス書・自己啓発書のこの時代、一人座して読書のための読書を楽しむのも悪くないかと思われます。
冷え込みも厳しい昨今、炬燵と御茶と蜜柑のお供に一冊いかがでしょう。
●今日のあれこれ
とりかへばや物語という古典があってですね……
近親はあるわ男装女装はあるわ「男の娘」はあるわで時代を先取りしすぎだなあ、あれは。かたかごさんが邦訳を公開していらっしゃるので興味のある方は一読してみてはいかがでしょう。学術文庫にも入っております。
■アイドルマスター ひょうきんベストテン(注:ニコニコ動画リンク)
ブラックデビルが神すぎる……
やや昔のゲームが中心です。螺旋回廊は名作だなあ。エグいですが。
うむ、病気だ。
宗教書祭り継続中の庵主でございます。
最近手を出したミルチャ・エリアーデ『シャーマニズム』が面白く、時間を忘れて読み耽ってしまいます。
エリアーデの『シャーマニズム』といえば、膨大な資料と博識を基に世界各地のシャーマニズム思想を論じた古典的名著ですね。シャーマニズムやシャーマンを研究における基本的文献でもあります。
シャーマニズムの本質はエクスタシー体験にあると定義し論を進めているため、論旨が明快でわかりやすいのが嬉しいところ。主に中央アジアとシベリアを扱っているため、そちらの文化や用語に馴染みがないと読み進めるのが少々辛いかもしれません。とはいえ、Google先生に頼ればどうにかなる範疇なのでご安心を。
原著は70年代のため情報が古くなっているところもあるようですが、古典なのは確かです。これを起点に色々読み、調べていきたいですね。文化人類学もちゃんと勉強しないとなあ。
あと翻訳が読みやすい。『世界宗教史』の第一巻(文庫本では一巻と二巻)の読みにくさを考えると嘘のようです。こうまで違うと翻訳の問題かもしれない。
●今日の歴史伝奇
やる夫歴史もので個人的に一番楽しみにしているシリーズ。剣豪・柳生石舟斎宗厳を皮切りに柳生一族の歴史を語ってくれます。
書いているのが神無月本舗さんということで、歴史的な面でのクオリティは文句のつけようがありません。記述の端々から丁寧に資料を調べているのが伝わってきます。
初期こそやや硬い感があったものの、回を重ねる毎に文章・展開共にこなれてきています。特に最近の柳生兵介(演ずるはオプーナ)編は本当に面白い。後の尾張柳生始祖にして新陰流正統三代、柳生兵介の青春が爽やかに描かれております。
あと宗矩(演ずるはやらない夫)が文武に通じ政治的見識も備えた出来物として描かれていて歓喜。宗矩は間違いなく傑物なのですよ。隆慶先生にはいじられまくっておりますがそれも愛ゆえです。多分。
お勧め。
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図解雑学シリーズは何気に良書が多いのですが(例えば『図解雑学 水滸伝』)、本書もその例に漏れぬ好著でした。編著者は宗教学者の井上順孝先生。新書の『神道入門』も好評でしたね。
本書は図解雑学、という体裁に相応しいわかりやすさを備えながら、神道を体系的に解説してくれます。
神道とは何か? から始まり、神社の解説、日本神話の要約、神道の祭り、歴史、思想など、これ一冊で神道全体が概観できるといえましょう。
特に第六章「神道の思想」が充実しています。真言密教と伊勢神道を組み合わせ隆盛を誇った両部神道から明治期以降の国家神道、今日の教派神道に至るまで、史実に沿って個別に解説されており、ある程度知識のある人にとっても整理する上で最適でしょう。このあたりを手際よく説明してくれる入門書はあまりないのですよね。微に入り細を穿ちすぎてマニアックになりがちな分野だけに、助かります。
神道についての入門書では最適に近いのではないでしょうか。全国の主な神社や祭礼についての資料も付されています。無論、索引も完備。
なお、神道の祭りについて一章を割いている上、大祓詞を全文掲載しています。伝奇ファンにもお薦めかと。
●今日の置物
何もここまでリアルにせんでも……
だがちょっと欲しい。
●WEB拍手レス
でもアッシュも女の子に罵倒されたりしつつ、決めるところはしっかり決めて、助けてたんだから……相性は良いような悪いような。とりあえずこいつが欲しけりゃSマートに来い。
3でのアッシュはいいヒーローでしたからねえ……
呪文忘れてたりしたのはまあ、ご愛敬ということで。
ご無沙汰しております。
エディシオン・トレヴィルのサイトによりますと、かの『ベクシンスキー』追悼復刻版の重版が行われるようです。エディシオン・トレヴィルGJすぎる。
当庵でも過去に取り上げましたが、ベクシンスキーといえばポーランドの画狂です。澄明な終末、とでも呼ぶべき画風を有し熱心なファン多数。無論私もその一人です。なお、ネットでのギャラリーがこちらにあります。
画集『ベクシンスキー』は1997年にトレヴィルより発刊。トレヴィル倒産後は絶版となっていましたが、2005年にエディシオン・トレヴィルで復刻されました。一年半ほどで復刻版も品切れとなり、入手困難となっていたのはご存じの通りです。古書価も矢鱈と高騰していました。
ここで重版というのは本当に嬉しい。改めて一冊いかがでしょうか。こういう機会はなかなかありませんしね。