読書録「激辛書評で知る 中国の政治・経済の虚実」

激辛書評で知る 中国の政治・経済の虚実激辛書評で知る 中国の政治・経済の虚実
矢吹 晋

日経BP社 2007-05-03
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 辛口の中国学者、矢吹晋による書評集。タイトルに一切の偽り無し。
 序文に

本書は中国について書かれた本を「批判的に読む」という作業を通じて、中国の実像に迫る方法を選んだ。いわば「話題の本によって、中国を読む」という試みだ。

 とありますが、まさにその言葉通りの一冊となっています。俎上に載せられるのは『マオ―誰も知らなかった毛沢東』、『中国を変えた男 江沢民』など多数。

 本書の凄さは二つあります。
 一つは、専門家ならではの鋭い知見と深い知識を活かした徹底的な書評を行っていること。特に第一部第一章『マオ―誰も知らなかった毛沢東』評ではそれが顕著。『マオ』そのものの問題点を一言一句おろそかにせずに追い詰め、返す刀で絶賛書評、「衝撃作」と繰り返すばかりの書評をも撫で斬りにしてゆきます。印象論ではなく、「どこが」「何故」間違っているのかを資料(無論、典拠付き)を引用して示しているため、説得力を欠くこともありません。舌鋒は厳しく、時に罵倒芸と言いたくなるほどですが、それが魅力的に見えてすらきます。

 二つめは、ただの書評で終わらず、扱った本を元にして説得力のある中国論を展開していること。
 例えば、『中国を変えた男 江沢民』を取り扱う第二章では、本の問題点や事実誤認を指摘した後、江沢民が何故一貫した反日スタンスを取るかについて解明しています。著者はそこに「漢奸トラウマ」を読み取っています(詳しくは本書をご覧下さい)。
 書評から江沢民論に至る流れは首尾一貫しており、優れた書評とは即ち一個の論と成り得ることを教えてくれます。

 著者の書評に対する姿勢は以下の言葉に良く表れています。

「やりとりが本当なら」と仮定法で逃げるのは卑劣である。これらのやりとりにおいての「真偽の判断をすること」が書評の責務である。もしその知識と能力を欠いているならば、「書評能力なし」と辞退するのが良識というものだ。(48ページ)

 大言壮語でなく、実践しているのが素晴らしい。それだけ自分の言葉に覚悟を持っているということだと思います。自分の発言は自分で責任を取るという心意気。
 中国という国に関心がある場合以上に、背筋を正した書評とは何か知る上でも読む価値はありましょう。

投稿者: 日時: 2007年06月18日 20:57 Web拍手

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