読書録「世界史の誕生」

世界史の誕生世界史の誕生
岡田 英弘

筑摩書房 1999-08
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 私達は「世界史」という言葉に何をイメージするでしょうか。
 各人によって詳細は異なりましょうが、古代から現代まで起こった出来事を、世界各地別に時間軸に沿って記述したもの、という理解が一般なように思います。近代史ともなりますといわゆる「歴史観」が錯綜し混乱してきますが、20世紀直前までならば、ある程度のイメージは共有できるのではないでしょうか。

 しかし、本書は漠然とした「世界史」のイメージを容赦なく、徹底的に破壊します。
 本書の主張は要約すれば「モンゴル帝国が出来上がり、ユーラシア大陸が東西に繋がるまで世界史は存在しなかった」となりましょうか。

 著者は、歴史を、ヘロドトスの「ヒストリア」から始まる地中海型と、司馬遷の「史記」から始まる中国型にと区別し、他国にある歴史は、これらの模倣や流入に過ぎないと断言します。
 前者は各国の興亡を描き、アジア圏を敵と見なした西ヨーロッパ中心史観であり、後者は、世界とは皇帝を中心とした宇宙であるとする中華史観。そして、これら二つの史観は全く相容れないものであるため、現代に至るまで世界の統一的な歴史を記すということは実質不可能になっているとします。

 これを解決する手段として著者が提示するのが、中央ユーラシアを主題とした歴史の記述です。
 さらに著者は記します。チンギス・ハーン率いるモンゴル帝国は、ユーラシア大陸全土を征服し民族や国家の滅亡、移動をもたらしたことによって、草原の道によって東と西を繋いだ。これによって、ユーラシア大陸の東で起きた出来事がただちに西に影響を及ぼすようになった。逆もまたしかりであり、言い換えれば、モンゴル帝国によって、はじめて洋の東西に共通した世界史が生まれたのだと。

 私は不勉強にして、著者の論がどれほど説得力を持つものか判断することは出来ません。ただ、自らの説を示すための多彩な知識に基づいた論証は、かなりの説得力を持つように思います。史学は無論のこと、言語学、地理学、人類学など、多種多様な学問を活かして論を進めており、著者の博覧強記ぶりを眺めるだけでも知的刺激になることは間違いありません。

 構成は整っていますが、情報量は凄まじい密度であり、手応えがあります。一行一行に重要な情報が詰め込まれているため、じっくり丁寧に読んだ方がいいでしょう。

 牽強付会な点(特にトルコをモンゴル帝国の継承国家としたこと)や中国への強烈な蔑視が気になりますが、全体としては刺激的で興味深い論考です。世界史や人類史に興味のある方には必読かと。


<関連リンク>

松岡正剛の千夜千冊『日本史の誕生』岡田英弘

●WEB拍手レス

 いただきました。有り難うございました(私信)。

投稿者: 日時: 2007年02月27日 23:34 Web拍手

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