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PCは結局新調しました。いい機会だし、この時期は型落ちが安いので。
それはそうと、2006年も今日で終わりでございます。
今年は本当に穏やかな一年でした。途中コケたこともありますが、おおむね可もなく不可もなく落ち着いた日々を送ることが出来たのが何よりの収穫。ここ何年か山あり谷ありだったからなあ。
年末ということでのんべんだらりと一年の総括を。
……と言いましても、やや音速遅めの私といたしましては、ホットな総括など望むべくもなく。発売・発表年度を問わずに、今年触れた作品から印象に残ったものを分野別に3つずつ紹介するという形にしようかと思います。ベスト3というわけではないのでご了承ください。
■小説
・古川日出夫『ベルカ、吠えないのか?』
・皆川博子『皆川博子作品精華』
・平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』
現在もっとも脂がのっているであろう作家、古川日出夫。『ベルカ、吠えないのか?』にはあらゆる意味でやられました。犬に呼びかけ、読者に語りかける濃厚な文体。犬たちの繋がりによって20世紀を語る=騙るという気宇壮大な試み。縦横に糸が張り巡らされた構成と、まさしく「小説」としか呼びようのない作品。素晴らしく刺激的であり、先鋭的です。
皆川博子という名匠を再発見した年でもありました。美麗であり、豊饒であり、時として妖艶ですらある文章から紡ぎ出される迷宮世界。その美しさ、妖しさは圧倒的です。濃密に立ち込める白粉の香りの中、熱に浮かされたように彷徨うのがどれほど魅惑的なことか。現役の作家ではトップクラスであろう著者の文体は、読めば読むほどに深みを増し、暗い輝きを放つように思われます。
平山夢明が一気にメジャーステージに躍り出たのは慶事でした。実話怪談の書き手として著名でしたが、一部では小説にこそ本領があるのではないかと囁かれてきたものです。上梓された短編集『独白するユニバーサル横メルカトル』は、読者の期待を遥かに上回るものでした。好みは大変に分かれるところでしょうが、生理的嫌悪感を描いてこれほどの方はなかなかいないかと。
国産ホラーや翻訳にも良作が見受けられ、怪奇幻想党にとっては喜ばしい一年でした。来年も楽しみです。
■ノンフィクション・科学書・新書・人文書など
・長谷部恭男『憲法とは何か』
・エドワード・W・サイード『知識人とは何か』
・ゲリー・ケネディ他『ヴォイニッチ写本の謎』
長谷部の議論は安っぽい護憲派とも、思考停止した改憲派とも一線を画します。その姿勢は徹底的なまでにクレバーでシニカルであり、理性的に突き詰められています。受け入れられることは難しいだろうなと思わせるほど。『憲法とは何か』は、長谷部が自らの憲法観を概観して記しており、憲法入門であると同時に長谷部憲法学入門となっています。ますます混迷を深める国際情勢、我が国の政治情勢を考える上で、一つの手がかりとなることは間違いないでしょう。
サイードもまた、晩年まで深く鋭い思索を怠りませんでした。『知識人とは何か』は元々ラジオ講演であったということもあり、読みやすく理解しやすいものとなっています。それでいながらサイードの思想、姿勢はくっきりと明瞭になっているのですから、これはもう名人芸。今日でも、サイード言うところの「知識人」は必要とされ続けています。
最後の一冊は趣味的に。かのヴォイニッチ写本について包括的に記した概説書です。日本語でこれだけ充実した資料となる本ははじめてじゃないかな。写本発見の経緯から様々な学説、解読者たちの導いた解釈結果に著者たちならではの結論と、これ一冊あればヴォイニッチ写本に関する知識を一通り仕入れることが出来ましょう。オカルト好き、不思議好き、暗号好きな方ならば必携ではないでしょうか。
新しければ良い、という分野で無いだけに紹介したい良書は山ほどあるのですが、それは来年度の読書録で追々ということで。
■ゲーム
・『THE IDOLM@STER』
・『機神飛翔デモンベイン』
・『戦国ランス』
2005年から2006年にかけてネットに旋風を巻き起こしたといえば、何をさておいても『THE IDOLM@STER』以外にありますまい。洗練されていない点も多々ありながら意欲的なシステム、多方面のニーズに応える魅力的なキャラクターたち、ユーザー間でネットワークを構築する楽しみと、良い意味で現在の風潮を活用した良作でした。残念ながら収益はいまいちだったようで各地で撤去が相次いでいますが、XBOX360版の発売でもう一度盛り上がりそうです。
デモンベイン劇場版とでも言うべき『機神飛翔デモンベイン』。本編は良く出来たサブエピソードであり、キャラクター、シナリオ共に魅力的でした。ですがそれ以上に、本作によって「サーガとしてのデモンベイン」という位置づけが成されたのが大きかったように思います。クリアした方なら解っていただけるかと。最新作『斬魔大聖デモンベイン ド・マリニーの時計』も発売されており、デモンベイン世界はまだまだ広がりを見せそうです。
『戦国ランス』は期待通りの出来でした。細部に不満は残るものの、硬派なシミュレーションとして楽しめます。ランスシリーズ特有のコメディとシリアスが絶妙に配分された空気も健在であり、ファンにはたまらない一品でした。10年以上の歴史を誇るランスシリーズもいよいよ佳境に入っており、今後も目が離せません。
■TRPG
・芝村裕吏/アルファシステム『Aの魔法陣』
・矢野俊策/F.E.A.R.『ダブルクロス・リプレイ・オリジン』シリーズ
・菊池たけし/F.E.A.R.『アリアンロッド・リプレイ・ルージュ』シリーズ
Aの魔方陣は大変に興味をそそられるTRPGでした。SDとPLの発想次第で文字通り無限大に広がる遊び方、上達を実感出来るピーキーなシステム、論理的整合性の高いルールブックと、類例の無い世界を提供してくれたように思います。儀式魔術によって、新たな人々との出会いを設けてくれた作品でもあります。
今日、かつてのTRPG氷河期が嘘だったかと思うほど多数のリプレイが出版されています。その中にあって、ダブルクロス・オリジンとアリアンロッドリプレイ・ルージュはオールタイムベスト級(年間ベスト級ではない)でした。
前者は隆盛を極めている現代異能バトルと古典的な正統派成長ものの要素を組み合わせ、さらにSF的な発想の妙で味付けした、ライトノベルというよりはジュヴナイル的なリプレイとして。
後者は圧倒的なまでの語り口の面白さと、キャラクター/プレイヤーの魅力、さらに三巻における偶然の積み重ねが生み出した悲劇的なストーリーにおいて。
これほど優れたリプレイシリーズが二つ同時に刊行され、リアルタイムで読めるというのは、TRPGユーザー冥利に尽きます。
<アニメーション>
・『涼宮ハルヒの憂鬱』
・『うたわれるもの』
・『ぱにぽにだっしゅ!』
2006年のアニメ界は『涼宮ハルヒの憂鬱』一色だった感があります。アニメ版『ハルヒ』は京都アニメーションの驚異的な技術力、話数の配列の妙、ネットという媒体を駆使した販売戦略によって、一躍角川の救世主になりました。原作の質の高さがあってこそなのは言うまでもありません。個人的には、80年代的な「毎日が日曜日」型日常SFの現代的再話という印象を受けております。
『うたわれるもの』は原作に忠実、かつ要所要所で的確なアレンジをいれた良作でした。もとよりシナリオに定評のある本作、アニメ版も見応えがありましたね。作画、声優などあらゆる面で高水準であり、平均値という意味では2006年一番だと思います。『うたわれるものらじお』が大評判を呼んだのも記憶に新しいところ。
『ぱにぽにだっしゅ!』は正確には2005年度作品とすべきかもしれませんが、ここで。基本的に原作に忠実であったハルヒ、うたわれとは対照的に、大胆なアレンジをくわえてのアニメ化でした。名手・新房監督の資質が良い意味で最大限に発揮された快作だったと言えましょう。
他にも、正負両面に渡り話題作が多い年でした。豊作であったように思います。
…つらつら書いてきましたが、本年度はこのあたりで。では皆様、良いお年を。
今後もどうぞよろしくお願いいたします。
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