読書録「詞華美術館」

「詞華美術館」

塚本邦雄

1978/文藝春秋


 先日購入したと書きましたが、改めて読書録を。アマゾンさんにデータが無いのでリンクはありません。
 2005年に亡くなった歌人・塚本邦雄の手になる卓越した精華集(アンソロジー)です。



古今東西の、詩歌を中心とした、名作の一篇もしくは部分を、一つの主題の下に選んで拾ひ、趣向を凝らして配合し、その人工的な邂逅によって醸し出される不思議な味はひを樂しんで来た


 という著者の言葉に、この本の魅力は集約されていましょう。
 内容的にはまさに「美術館」であり、構成は端正の一言。考え抜いて美術品を配置した美術館そのものです。
 本文は三章三十一項目に分かたれており、各項目に「鳥うたむ」「無明の花」「流扇興」「瑠璃甲冑」などといった、魅力的な題を配置。さらに、項目に適した詞/詩/小説の断片を複数配置し、最後に塚本自身が解説とも随筆ともつかぬ文を記すという形態をとっています。

 取り上げられている作品は幅広く、源氏物語があるかと思えば唐代の七言律詩、現代詩にヨハネの默示録、さらにはヴィリエ・ド・リラダン(無論のこと齋藤磯雄の飜訳です)と実に多彩。
 古今和歌六帖とマラルメを並置するあたりなどはとても良い。

 抜粋の後に配された塚本自身の文章も、繊細かつ鋭利な知性が窺い知れるものばかり。音読した際の言葉の響きや漢字の選定などへの気遣いは、優れた歌人ならではのものでしょう。

 全編旧字体なのも嬉しいところ。こと視覚的な美しさに限っては、旧字に一日の長があると私は常々思っております。本書が「美術館」である以上、旧字が採用されているのは必然の道理かと。

 無人島に持っていきたい一冊です。詩やアンソロジー好きな方は是非お手元にどうぞ。
 割合に入手しやすい本のため、日本の古本屋で探せばすぐに見つかると思います。


●今日の書籍

三省堂書店神田本店で「東大出版会在庫僅少本フェア」実施中東京大学出版会

 三省堂神田本店にて、東大出版界のフェアが行われているようです。大学出版会の本は品切れになると一気に入手困難になるため、お気になる方はチェックしてみてはいかがでしょう。
 開催時期は6/30まで。私も行ってみようかと思います。

投稿者: 日時: 2006年06月16日 20:33 Web拍手

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