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突然ですが、どうにもネタ切れなので個人的にお気に入りな伝記的怪人について書いてみます。
お題はイタリアの生んだ稀代の碩学、アントニオ・マグリアベッキについて。
■アントニオ・マグリアベッキ(Antonio Magliabechi)
イタリアの学者、司書。1633年生、1714年没。
世に知識の集積者は多けれど、これほど徹底した人物は空前、おそらくは絶後であろう。
40歳になるまで金細工師として生計をたてていたが、本来の興味は書を購い、耽読し、学ぶことにのみあった。
卓越した言語の才能を有し、ラテン語、ギリシャ語、ヘブライ語に精通。驚異的な記憶力の持ち主でもあり、金細工師であった時より一部には知られていたらしい。
メディチ枢機卿の司書であったMichele Erminiの尽力もあり、1673年、かのトスカーナ大公コジモ三世に仕える司書となる。ここからが彼の人生の真のスタートと言える。
生涯をフィレンツェで過したこの人物、無限とも思える知識はほぼ全て書物から得ていた。
その記憶力はまさしく神業であり、管理している蔵書の内容は無論のこと、特定の文章が、どの本の何ページ、何行目に書かれているかすら熟知していた。
コジモ三世がある稀覯書について尋ねるとこう答えたという。
「陛下。その本は私の知る限り、イスタンブールの君主の文庫に一冊だけ御座います。入って右から二番目の書架、七冊目がそれに御座います」。
勿論、マグリアベッキはイスタンブールになど行ったことはない。それどころか、フィレンツェから出ることすら稀であった。
学術上のいかなる問いにも惜しみなく正確な答えを与え、非公式ながら同時代の出版物における共同制作者と見なされている。
私生活では完全な奇人であった。フィレンツェの名物とされ、観光客や宮廷への客人の興味の的となったほどである。だらしなく、いい加減で、不潔。煙草をひっきりなしにふかし、塩漬けの魚くらいしか口にしなかった。天井まで本に埋もれた家で生涯独身を貫いた。
徹頭徹尾知識の人であり、著作などは現存しない。死後、その蔵書30,000冊はヴェネツィア市へと寄贈された。
現在それらはフィレンツェ、国立中央図書館が所蔵している。
本邦ではどうにもマイナーな碩学。残っている逸話を見ると、どれもこれもがその怪物的記憶力と知識を強調しています。
当時は情報の量が限られていたとはいえ、それにしても超人的。世界はたまにとんでもない人間を生み出すものです。
あやかりたいものだなあ。
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