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今回は文体を変えています。
さて、件である。
何がさてなのかというと、某所で牛の神が話題に出て盛り上がっていたからだ。つまり深い意味はない。
牛の神性は古くから伝えられている。誰でも知っているミノタウロス伝説や、世界各地における牛信仰は勿論のこと。本邦の説話集にも、牛を題材としたものは少なくない。例えば、『栄花物語』巻二十五には夢の中に牛仏が現れお告げをしたという話があるし、牛の鳴き声が阿弥陀経と一致するという逸話が『古今著聞集』に見られる。牛に関するの異常報告というだけならば、『日本書紀』が最古のものであるようだ(もっともこれは、牛の奇形に関する話である)。
そして、本邦において最も有名な牛の化生といえば、件であろう。
件とは、人の顔に牛の身体を持つとされる妖怪だ。その伝承は主に、中国地方~九州地方にかけて分布している。
災害、疫病、豊作、飢饉などを予言し、社会に異変が起こる時に出現する。その予言は絶対に外れることがなく、件は予言をして数日で死ぬと云う。
天保七年――余談だが、幕末三舟の一人である山岡鉄舟はこの年に生まれている――の瓦版では既に、丹後の国に出現したという件の絵姿を見ることが出来る。瓦版によれば、宝永二年の十二月にも出現が記録されている。
また、慶応三年四月には雲州(今で言う島根県)の在方にも件が生まれ、豊作と疫病の流行を予言したと云う。葛飾北斎にも「くだんうしがふち」という作品があり、少なくとも江戸時代後期にはメジャーな存在だったことが伺える(事実、「依って件の如し」という言い回しは当時から一般的に使われていたようだ)。
衝撃的なのは『名古屋新聞』明治四十二年六月二十一日号に掲載された記事だろう。
「人面獣心といふことはあるが、これは人面牛態だ、今より十年前肥前国五島の奥島の或る百姓家の飼牛が産んだもので、今は剥製になつて長崎市の八尋博物館に陳列されてゐる、
何でも生後三十一日目に「明治三十七年には日本は露西亞と戦争をする」と云うて死んだのださうな、件だけに豫言が的中してゐる、それで本富に依つて件の如しだ」
との文章と共に、件の剥製を撮影した写真が確認できる。この写真がなかなかに迫力なので『明治妖怪新聞』などでご覧いただきたい。虚ろな目が怖い逸品である。なおこの本、アマゾンでは評価が低いが資料としては優秀なので、怪異愛好家の方にはお勧めだ。
残念ながら、件の剥製は散逸している。なお、2004年に開催された「」でも件のミイラが展示されていたのでそれを御覧になった方もいらっしゃるのではなかろうか。
第二次世界大戦中にも、悪病の流行や、戦争と疫病で国民の大半が死ぬという風説が、件の予言として流れたと云う。
戦後、件が公に出現したという記録はない(不勉強にして私が知らないだけかもしれない)。
だが、90年代に入ってからは、「牛の頭をした女に追いかけられた」という都市伝説や、『新耳袋』に収録された「牛女」に関する話など、件を想起させる伝聞が増えた。興味深いのは、ここでは件が牛面人身になっていることだ。小松左京の名作『くだんのはは』の影響だろうか。最も、牛頭女身たる「牛女」の伝承は戦前からあるようなので、何とも云えないが。
人と牛のハーフという姿や予言を伝える獣という魅力的なモチーフを持つためか、件を扱った作品も見受けられる。
明治以降の文学で、はじめて本格的に件を主題とした、内田百閒の夢幻的な短編『件』。先ほども挙げた『くだんのはは』。小松左京の『牛の首』も似た性質の作品だろう。岩井志麻子の『依って件の如し』は作者得意の土俗的雰囲気と語り口が上手く融合した良作だった。
ところで、神戸の「牛女」や『くだんのはは』の件には、怨念や祟りの影が付きまとう。妖怪としての件は完全な予言獣であり、そのようなものとは縁遠いにも関わらず、だ。
そういえば、「牛女」と『くだんのはは』。どちらも牛頭女身である。矢張り牛頭人身である牛頭天皇が祟り神であることと何か関係があるのだろうか。
想像をたくましくすれば、それらの存在が女身であり、即ち神託を受ける巫女であるとも思える。これは妄想。
中国の神獣・白澤と件の関係性も興味深い。もうしばらく資料を当たってみたいテーマである。
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始めまして!真田タケトと申します!
短文でスミマセンが、アウレオールスの夜に、第七話以降、まだですかぁ~?
アッシュの活躍、とっても見たいです!
あ、ついでに、舞乙HiMEのアカネ・ソワールも登場させて欲しいです(出来れば今後の話で)(笑、おいおい!!)
それでは!
投稿者 真田タケト | 2006年04月18日 19:51
はじめまして。いつも楽しく拝見しています。
さて、今回は「件」の話でしたが漫画でもいくつかの作品で登場していますね。
私が知っているのは高橋葉介の「夢幻紳士逢魔篇」に収録されている「件」と、とりみきの「パシパエーの宴」です。いずれも最近発売された物ですか゛。なお、とりみきは「事件の地平線」という本の中で「件」のルーツについて紹介しています(おそらく「パシパエー」取材時のものでしょう。古い作品なので手に入れにくいかもしれません)。
知っておられるかもしれませんが、もしよかったら読んでみてください。両作品とも面白かったです。
投稿者 ONE EYE | 2006年04月18日 22:00
>真田さん
は、申し訳ありません。もう少しだけお待ち下さい。第一部の後少し間隔を置いていましたので、はい。
あと新規キャラ登場要請にはお答えしかねます……お許しください。
>ONE EYEさん
どちらも名作ですね。とり・みきの作品は幻想文学誌で読んだ覚えがあります。
「事件の地平線」は探しているのですがどうにも見つかりません……
投稿者 ヤス | 2006年04月21日 23:40