読書録「秘密の動物誌」

秘密の動物誌秘密の動物誌
ジョアン フォンクベルタ ペレ フォルミゲーラ 管 啓次郎

筑摩書房 1991-12
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 何年も前からの愛読書なのですが、読み直したら矢張り素晴らしかったのでこちらで紹介。

 博物学的幻想を扱った奇書です。
 
 タイトル通りの動物誌なのですが、扱っている動物が奇妙なことこの上ない。
 ペーター・アーマイゼンファウヘン博士が世界中で発見した

・炎を吐くトカゲ、ピログリファス・カタラナエ
・伝説上のケンタウロスに酷似した哺乳類、ケンタウルス・ネアンデルタレンシス
・翼を持つ大型猫科動物、フェリス・ペンナトゥス

 といった動物たちが、写真と詳細な解説と共に記されています。
 アーマイゼンファウヘン博士が遺した書類が偶然発見されたという背景のためか、写真だけ掲載されている動物も数体。当然というべきか、学会で公認された動物は一体も居ません。どれもこれも、既存の生物学的常識を覆すような奇怪な生物です。

 ここまででお解りの方にはお解りでしょう。
 amazonでの「この本を買った人はこんな本も買っています」が

平行植物
鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活
宮崎駿の雑想ノート

 であることから明らかなように、本書は正しく幻想博物誌です。
 本書は「鼻行類」ほどの生物学的迫真性は有りませんし、「平行植物」の持つ美学的精神からも遠い位置にあります。
 ですが、それ故に幻想としての博物学の魅力を最大限引き出せているように思います。
 ページをめくる度に飛び出てくる、奇妙奇天烈な生物たち。写真の適度な紛い物ぶりや各生物の怪しげな来歴が、その驚きをいや増します。

 架空の生物を、まるで実在のものであるかのように語り記すという試みは、現在でこそ成立する遊びでしょう(この試みにおいてはTRPG「蓬莱学園の探検!」が高い完成度を示していました)。
 大博物学時代には、異国からもたらされる報告一つ一つが素晴らしい刺激でした。かつて日常茶飯事だった、観たことも聞いたこともない驚異の生物たちを知る喜び。
 今となってはその驚きと喜びを幻想にしか求められないのは悲劇かもしれません。ですが、幻想と化した故に、永遠に歓喜と驚異を汲み出せるようになったと考えることも出来ましょう。
 事実は小説より奇なりと申しますが、想像力は事実より奇なりというのもまた真実なのです。

 本書は残念ながら絶版ですが、ネット古書店やamazonのマーケットプレイスで容易に入手可能。幻想の喜びを愛する人全てにお勧めです。


●WEB拍手レス

 私信:丁寧なコメント有り難う御座いました。当方も気をつけます。今後ともよろしくお願いいたします。

>こんにちは、管理人様。
>「アウレオールスの夜に」はもの凄く楽しくて早く続きが見たいです(^^
>無理なお願いですが、次辺りの回にこんな生物兵器を出して欲しいのですが――

 スペックなどは省略させていただきました。
 は、大変申し訳ありませんが、プロットは一応決めているため、要望にはお応え出来かねます。ご容赦下さいませ。

>「厭魅の如き憑くもの」はもうお読みになられましたか? 良い物を薦めて頂きました。有難う御座います。こちらの書評はツボなものが多く役に立ちます。

 厭魅は積んでます……早く読まなければ。
 書評は気に入った本だけを紹介しているため、少しでもお役に立てれば幸いです。

投稿者: 日時: 2006年03月14日 20:21 Web拍手

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