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講談社で時代小説フェアを開催しておりました。
良作傑作が無数にあったわけですが、今回はフェア開催作品でも一押しのこちら。
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戦国の世が終わり、太平の世と変りつつあった江戸時代初期。後水尾天皇は僅か16歳で即位された。
しかしこの当時、既に徳川幕府の力は天皇家を圧していた。
徳川家の圧力により、天皇は2代将軍秀忠の娘、和子を皇后とすることを余儀なくされる。
帝の味方は極僅か。少数の忠信たちと、鬼の子孫とされる八瀬童子の直系・岩介が率いる“天皇の隠密”たち。
しかし、後水尾天皇は史上最も気性が激しいとされた傑物だった。帝は権力に屈せず、自由を求めて、幕府の強大な権力と闘う決意をする
ある意味で隆慶一郎的大妄想が極点に達した傑作です。
本作のキーワードは“過剰”の一言に尽きます。
・プロットが過剰
・呪術も過剰
・何といっても登場人物造形が過剰
まずはプロットが過剰。
要約してみましょう。
「巨凶徳川秀忠率いる悪の巨大組織徳川家。その暴虐とすらいえる力は、公家社会を破滅の危機に追い込んでいた。誇りある公家社会――天皇家もこれまでか。誰もがそう思う中、二人の男が立ち上がる。朝鮮に渡り異能の力を身につけた超人・岩介。そして、江戸三百年間を通じて最も苛烈と云われた天皇・後水尾天皇。彼らは志を同じくする仲間を集め、徳川家に対し絶望的な抵抗戦を開始した」
誇張無しです。
全く恐ろしい。今まで天皇家(正義) vs 徳川家(巨悪)という構図を真剣に、しかも娯楽要素満載で書いた作家がいただろうか。
呪術についても同様です。
本作以前の隆慶一郎作品に登場する呪術といえば、せいぜいが、松永誠一郎シリーズ(吉原御免状とかくれさと苦界行のこと。本来は四部作の予定だった)にみられる過去視・未来視・予知能力程度でした。
ですが「花と火の帝」はひと味違う。
結界やテレキネシスは基本、読心術に心の壁、完全記憶に呪術返し、果てはテレポーテーションまでと、ほとんど超伝奇アクション小説の世界。
主人公である岩介からして作中最強クラスの術者のうえ、天皇を「日本最高の呪術者」としているという呪術尽くし。
柳生宗矩率いる裏柳生軍団が、岩介の呪術にこてんぱんにされるあたりは爆笑してしまいました。哀れ宗矩。
そして最後に人物造形。
岩介は豪放磊落でいつでも死ぬ覚悟が出来ている男の中の男な「いくさ人」とまあ、隆先生お馴染みの造形なんですが、主役である後水尾天皇が凄い。
華道茶道をはじめとした公家の作法に精通し、岩介手ずからの鍛錬により武芸の達人でもあり、さらには日本最高の呪術者でもあるという八面六臂キャラ。しかも隆先生的な「いい男」なので、言動が一々男らしすぎてたまりません。裂帛の気性と反骨精神、そして天から愛された運の強さを持つ天皇の言動は痛快このうえなし。
帝をはじめとする公家たちは、徳川に与する「いくさ人」たちと好対照を成しており、読ませます。
天皇家の敵となる面々も多種多様ですが、輝いているのは何といっても秀忠でしょう
そう、隆慶一郎作品を愛する方にはお馴染み、悪の帝王徳川秀忠です。
本作の秀忠の悪ぶりは実に素晴らしい。影武者徳川家康で見せた粘着的へたれぶりに匹敵する情けなさ + しつこさ。天皇の寵愛する女御に対する非道な仕打ちも相まって、完全無欠の悪役となっております。
隆先生の作品を読む度に思うのですが、先生は徳川家を愛しすぎです。そうでなければここまで徹底して悪役を割り振りませんよ。
他にも岩介の兄貴分にあたるインド人やら、無頼の修験者やら。まるっきりアンドロイドみたいな怪物まで出てきます。もうやりすぎ。
そして本作の陰の主役、柳生宗矩。
キングオブやられ役です。もうこてんぱん。可哀想なくらい良い所なし。影武者徳川家康の宗矩だってもうちょっと見せ場あるぞ。
主要作品ほぼ全てに登場し、その大半で悲惨なまでのやられ役を演じる宗矩。もしかしたら隆先生は宗矩が一番好きなのではないかと思わせる位です。好きな相手ほど意地悪したくなるというアレ。
是非とも石川賢に漫画化して貰いたい一品であります。どう考えても漫画雑誌には連載出来ないでしょうけど。
未完であることが心底悔やまれます。
●WEB拍手レス
>今回のお勧めの本はまた、ようございますなぁ。これにメディアファクトリーからの「怪談双書 怪談の学校」をつければ完璧であります。ところでやす様は漫画の「蟲師」はお読みでしょうか? あれも大変良いものです。
怪談の学校は昨日届きました。いや、あれはいいですね。収録作や添削された怪談もいいし、京極夏彦の序文も素晴らしい。「開校の辞」が一番怖かったりします。
蟲師も良作ですね。アニメも好評らしいので見てみようかと。
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