読書録「キャスコ湾乗っ取り作戦」

キャスコ湾乗っ取り作戦キャスコ湾乗っ取り作戦
ボブ ライス 大貫 ノボル

扶桑社 1987-08
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<あらすじ>

 1942年、アメリカの連合軍参戦にヒトラーは危機感を抱いていた。アメリカを封ずるには、世論を参戦ではなく専守防衛に傾けてしまえばよい。そう考えたヒトラーが目をつけたのは、米メイン州・キャプテンズ島に設置された巨砲二門だった。この巨砲をもって、英国へ向かう米輸送船団を沈没させてしまおうというのだ。

 この作戦のために選ばれたのは、米国人傭兵ジョン・ライカー。心身共に鍛え上げられた、望みうる限り最強にして最良の男。そして彼が率いるのは、一騎当千のドイツ軍決死部隊40人。

 ライカーに率いられたこの部隊は、島に首尾良く上陸するや否や、米軍警備兵149人を瞬殺してしまう。
 島に残された軍人は、トーマス・ハイドン中尉ただ一人。高い素養を持つものの、上院議員の子として産まれ、親の命によりただ一度の実戦経験も持たない男。

 プロ中のプロ40人とアマチュアただ1人。絶体絶命の抵抗作戦が、始まる。




 いや、予想以上に楽しめました。
 ぐぐっても殆ど引っかからないマイナー作品ですが、なかなか。思わず一気に読んでしまいましたよ。

 作品の基本プロットは、要するに『ナヴァロンの要塞』の逆パターンです。そして、ジョン・ライカーの造形はほとんどそのまま『鷲は舞い降りた』。ところがただの剽窃では終わっていない。

 骨格は傑作戦争小説のいただきなのですが、これがどうして面白い。ライカーの島への侵入プロセスやその後の隠密作戦行動もしっかり描写されていますし、決死部隊の面々も魅力的。特に、薄汚れた格好をし、メタルフレームの眼鏡を神経質にいじりながら一々気のきいた台詞を吐く副官、通称“教師”はいい味出してます。

 米軍側のキャラも立っています。主人公トーマス・ハイドンは、坊ちゃん育ちのヘタレに見えながら、その実やる時はやる男。島という地理的な利点を生かし、独逸兵とただ1人で戦うあたりは、中々手に汗握らされます。正統派のヒーローですね。ヒロインであるコリス・ケリーとのロマンスが蛇足っぽいのはまあ、ご愛敬。
 描写は少ないながら、素朴で単純だが芯が強い村人たちにもつい感情移入してしまいますな。

 そして何より、プロ40人 vs アマ1人という燃えシチュエーション。しかもプロ側――つまり敵側のボスであるライカーは、冷静沈着、格闘射撃サバイバル全てに精通した凄腕。それに対するアマチュア、トーマス・ハイドンは、才能こそあるものの実戦の経験は絶無。この舞台設定で燃えない人間がいようか。いやいない。

 独逸軍の島占拠までにページを使いすぎて、肝心の40vs1が薄味な気もしますが、これはしょうがないかなあ。あんまり派手にやりすぎると、それこそランボーか沈黙の戦艦になってしまいますし。

 文章はリーダビリティが高くすらすら読めます。作品の構成が荒かったり、時間軸が多少解りにくかったりもするのですが、まあこれくらいは仕方ないかなあ、といったところ。サンケイ文庫というマイナー文庫で出版されたせいか殆ど話題にならなかったようですが、文春あたりから宣伝付で出せば結構売れたんじゃないかな。

 絶版ですが、ネットの古書店でも格安で入手可能。アマゾンさんのマーケットプレイスや、古本市場などにも在庫がありました。ブックオフ型の新古書店でも探せば見つかると思います。
 興味をもたれた方は是非どうぞ。

投稿者: 日時: 2006年01月05日 22:35 Web拍手

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