読書録「珍説愚説辞典」

4336045291珍説愚説辞典
カリエール ベシュテル

国書刊行会 2003-09-20
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 サイトリニューアル前に一度取り上げたのですが、ちゃんとした形で書いてなかったのでこちらで。
 大作家から大学者、ローマ法皇から大新聞、古今の教養人が書き残した言説を集大成した事典です。B5二段組みで750ページ、総項目3500以上というボリュームを誇り、内容も値段もヘビー級。普通なら只の教養書ですが……奇書万国奇人博覧館の著者が手がけているとなればただですむはずがありません。

 本書に収められているのは、その全てが珍説愚説の類です。表紙には『世界史や個人の伝記にまつわる、わけのわからない言葉、間違い、誤綴、莫迦げた考え、大胆すぎる仮説を含む。それに加えてかなりの数の愚かしい言葉、ありとあらゆる種類の狂気や空想、空疎な駄弁もあり』とあり、内容もその言葉と一言一句違いません。
 記された「珍説愚説」は

【ピカソ】
典型的な分裂病患者の作品だね。(カール・ユング)
面白いよ、君。君は劇画に専念すべきだと思うね。(フェリックス・フェオネン)

やら

【ピアノ】
どのメーカーのものであれ、如何に贅を尽くしたものであれ、ピアノの形は醜悪である。音楽家の想像力がどれほど飛翔してゆこうが、ピアノの形は依然としておぞましいままだ。その対極にあるのが、審美的にも美しいパイプオルガンである。(エミール・バイヤール)

やら

【二】
厳密に言えば、政体というのは二つしかない。万人のための政体、あるいは少数者のための政体、そしてただ一人のための政体である。(コテュ『青少年のための政治入門』)

やら延延この調子。全編に渡り、的はずれだったり愚かしかったり理解不能だったりする言葉がひたすら続きます。言葉の主は当時屈指の教養人ばかりというのがまた何とも。

 抱腹絶倒の一冊ですが、愉快なだけの本ではありません。序文には、珍説愚説辞典を貫く思想が明確に語られています。
 編者たちは序文で「一番いいものしか入っていない」「選集や名作集」を強く批判します。成程、天下りの「贅沢品のカタログ」からもたらされるのは、何も彼もが正常で知的な、おそるべき古典主義世界でしょう。其れはディストピアに他なりません。
 編者は言います。

そう、我々は愚かしさに苦しんでなどいない。まったく逆である。我々は愚かしさを愉しみ、自らの栄養としているのだ。豊穣であること、それこそが明らかに、愚かしさの最高にして最大の得なのである

 正直理解しがたい内容も多々ありますが、読んで損はない一冊です。

投稿者: 日時: 2005年12月19日 21:12 Web拍手

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