2005年を振り返る

●2005年度版・本漫画ゲームオブジイヤー

 年末の定番中の定番ですね。
 あ、オブジイヤーと言いましても、今年出た作品のみを扱っているわけではありません。私が今年読んだorプレイした作品を扱っていること、ご了承下さい。
 では小説から参りましょう。


■小説

・「日本怪奇小説傑作集1~3」(アンソロジー)
・「ゴシック名訳集成暴夜幻想譚」(アンソロジー)
・「アラビアの夜の種族
・「ナヴァロンの要塞
・「アデスタを吹く冷たい風」(短編集)


 アンソロジーが豊作な一年でした。
 中でも「日本怪奇小説傑作集」は、明治以降の日本怪奇幻想小説を文庫サイズ三巻にまとめるという試みが素晴らしい。この種の試み、ありそうで無かったんですよね。アンソロジーの大定番「怪奇小説傑作集1~5」と併せて読めば、日本、欧羅巴、米国の怪奇小説の流れは一通り掴めると思います。読めそうで読めなかった作品がセレクトされてるあたりも素敵。流石は紀田順一郎 & 東雅夫の最強コンビだ。

 学研の「伝奇の匣」シリーズ、「ゴシック名訳集成 暴夜幻想譚」も意欲的。中東圏を舞台にしたゴシック小説を文庫サイズで提供。メレディス「シャグパットの毛剃」(皆川正禧訳)、ベックフォード「ヴァテック」(矢野目源一訳)といった二大作品を収録しています。ヴァテックの矢野目訳は中々読めなかったんだよなあ……嬉しい。「伝奇の匣」は現在一時停止してしまっているようですが、ゴシック名訳集成の第三弾「吸血妖魅考」も期待しております。

 アラビア繋がりで「アラビアの夜の種族」。すいません、幻想文学ファン名乗りながら今年まで読んでませんでした。二重三重の入れ子構造を有した、偽史と偽書の物語。優れた物語と文体、そして入れ子の仕組みにより、この本そのものがファンタジーになっています。

 食わず嫌いしていた冒険小説を読み始めたのも今年から。大定番「ナヴァロンの要塞」は文字通りの徹夜本でした。一部のキャラがちょっと超人すぎる気もしましたが、そんなのは些細なことに思える秀抜なプロットと人物造形。不潔のミラーが格好良いんだ、これが。

「アデスタを吹く冷たい風」。これ読んだのは実は2004年なんですが、何度も再読したのでこちらに。チェスタトンを陰鬱にした印象のある、切れ味鋭いミステリ短編集でした。独裁国家における軍人であり、同時に探偵役でもあるテナント少佐の造形が素晴らしい。本格推理短編でも陰影の濃い人物は描くことが出来るのですな。

 他にも「血と薔薇の誘う夜に―吸血鬼ホラー傑作選」、「ゴーレムの檻」、「煙の殺意」、「ある日、爆弾がおちてきて」なども良かった。全体的に短編集に魅せられた一年でした。


■小説以外(評論、ノンフィクションなど)

・「アウシュヴィッツと<アウシュヴィッツの嘘>
・「消滅する言語―人類の知的遺産をいかに守るか
・「誰も読まなかったコペルニクス -科学革命をもたらした本をめぐる書誌学的冒険
・「知識の社会史―知と情報はいかにして商品化したか
・「日本怪談集幽霊篇妖怪篇


 文化史や歴史が中心ですな。「アウシュヴィッツと<アウシュヴィッツの嘘>」はありそうでなかった、ホロコーストについての基本事項をまとめた一冊。ホロコースト否定派……いわゆる「修正派」の論点の問題点も記されています。基本文献として抑えておきたい本。読書録でも触れた、著者がP94で語った言葉は心に留め置くべきかと。

「消滅する言語―人類の知的遺産をいかに守るか」。世界各地で絶滅の危機に瀕している少数言語、それをいかにして保護してゆくかを概説し、今後の展望について記したこの本が新書という手軽なサイズで出版されたのは素晴らしいことでした。本書の論理を帝国主義として批判する声も聞こえますが、感情的な反発のように思えます。しっかり読み込んでいればそのような批判はしにくいと思うのですが。

 次の二冊はハードカバー。「誰も読まなかったコペルニクス」は、コペルニクスの著作「天球の回転について」をめぐる正に書誌学的冒険。ことに、一流の科学史家である著者が「天球の回転について」への書き込みから、当時の学者間のネットワークを探り当てるあたりは本格ミステリ顔負けの興奮でした。

「知識の社会史」はかなり硬質な専門書でしたが、読み応えは十二分。15世紀の印刷革命から18世紀百科全書派台頭の時代まで、人類が知識を発見、獲得、分類、管理し、やがては商品化するに至るまでの展望は、心地良い知的興奮を呼び起こしてくれました。

 最後に「日本怪談集 妖怪篇・幽霊篇」は、妖怪研究、幽霊研究における基本図書の再刊。長いこと入手困難だったので非常に助かりました。中公文庫はこの手の基本図書を定期的に刊行してくれております。今後も期待。


■漫画

・「夕凪の街・桜の国
・「失踪日記
・「Y十M 柳生忍法帖
・「シグルイ

 これのみ四冊で。「夕凪の街・桜の国」は、広島を舞台にした、ある一家の物語。テーマがテーマだけに、安易に語るのは避けたいと思います。ご一読を。

 メディアでも話題になった「失踪日記」には、漫画という表現の強さを実感しましたね。アル中に失踪という、文字で書けば重苦しくならざるを得ない主題を、漫画ならではの表現で昇華しています。悲惨極まりない経験なのに読み手は思わず笑ってしまうこの感覚。お見事でした。

「バジリスク」に続く山風作品漫画化第二弾「Y十M 柳生忍法帖」。バジリスクに比べて反響が今一な気もするんですが、とっつきやすさではこちらの方が上ではないでしょうか。連載も丁度盛り上がってきていますし。しかし十兵衛と漆戸の対決が楽しみだな。

 そして2005年度も圧倒的な迫力だった「シグルイ」。連載開始からただひたすら狂気が加速し続ける恐るべき作品。一流派の跡目争いが何故ここまで迫力を持ち得るのか。とにかく今年も虎眼先生が全てでしたな。あと「でかした!」とか「支払ったのは鉄扇であった」とか。


■ゲーム(コンシューマ、エロゲ問わず)

・「あやかしびと
・「Fate/hollow ataraxia
・「処女はお姉さまに恋してる
・「戦国BASARA
・「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君


 クロスオーバー「吸血大殲」でも知られる東出祐一郎さんがシナリオを担当した「あやかしびと」はまさしくエンターテイメントと呼べる傑作でした。閉鎖都市、人妖能力、人外に謎の組織の陰謀、燃えあり萌えあり涙あり笑いありエロありと、現代伝奇とハリウッド映画の良いところを混ぜたような娯楽大作。いや、楽しませていただきました。制作スタッフの方々の力か、システムまわりの使い勝手も良かったですね。中央東口絵も魅力的。九鬼先生と虎先生格好良いよ。

「Fate/hollow ataraxia」はまあ、言わずもがなでしょう。ファンディスクとしては賛否両論あったようですが、個人的には一人称の使い方の上手さに目がいきました。これって完全に叙述ミステリの方法論だよな……

 最初見た時は「マリみて?」かと思った「処女はお姉さまに恋してる」も良作。主人公の瑞穂お姉様のキャラが光ってましたね。シナリオは攻略キャラによって揺らぎがありますが、一定の質はキープしており許容範囲かと。とりあえず貴子さんがたまらんかった。学園コメディは大好物なので、お気に入りのシーンをセーブ&ロードして今でもちょくちょく楽しんでます。

 コンシューマでは「戦国BASARA」が凄かった。戦国無双のパクリかと思ってたんですが……比較にならない弾けっぷりでした。そこまでやるか、という過剰演出が炸裂。特に伊達政宗は本当にどうかと思った。"Are you ready, guys?"は戦国時代ゲーム史上に残ると思う。

「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」は始まりから終わりまで安心して楽しめましたね。少し不安だった3Dダンジョンもプレイしやすくて一安心。シナリオも良かったな。


■TRPG

・「異界戦記カオスフレア
・「アルシャードff
・「クトゥルフ神話TRPG クトゥルフと帝国
・「異能使いサプリメント 妖異草子
・「ダブルクロス・リプレイ・オリジン 偽りの仮面


 まあ何と言いましても「異界戦記カオスフレア」です。小太刀右京と、その朋友三輪清宗氏の手になるクロスオーバーTRPG。取り回しの良いシステム(フレアシステムは傑作です)、豊富なデータ、遊びやすく魅力的な世界設定と、贔屓目を抜きにしても本年度有数の出来でしょう。でもエラッタは早めにお願いします。モールとか。

「アルシャードff」はファンタジーRPGの定番「アルシャード」のリメイク。旧アルシャードからしてコンパクトにまとまったプレイアビリティの高い作品でしたが、その方向性がさらに強化されています。完成度という点ではアリアンロッドと並びFEARのベストじゃないかなあ。

 そして待望の「クトゥルフと帝国」。10年程前にRPGマガジンで告知されながらお蔵入りになっていたサプリメントがついに復活。クトゥルフ、大正時代、帝國日本というテーマだけで血湧き肉躍る。有名人に加藤保憲がいるあたり、帝都大戦プレイも出来そうです。

「妖異草子」は「異能使い」に革新をもたらしたサプリメントでした。徹底して妖怪にこだわり、100種を超えるデータを注ぎ込んだ力作。これによって、「ダブルクロス」や「魔獣の絆NT」との差別化が出来たように思います。サプリメント単体の出来も◎。

 リプレイでは「ダブルクロス・リプレイ・オリジン 偽りの仮面」が一番良かったですね。軽妙な掛け合いと、古き良き日本SFを思わせるシナリオの仕組みが秀逸。ただの漫談プレイになっていなかったのも良かった。菊池たけし専有状態だったリプレイ業界、これからはクレバー王子ことプリンス矢野の活躍にも注目です。

 以上、2005年の総括でした。
 来年も当サイトをよろしくお願いいたします。
 では皆様、どうぞ良いお年を。

●今年最後のWEB拍手レス

>TV版リンかけもそうでしたが、劇場版聖闘士星矢にも永田選手は出演されております。出番は序盤で少なめですが、リンかけと同じく「味のある」声をされておりました。車田先生はある意味で伝統というか、こちらも聖闘士星矢ですが、玩具のおまけカセットテープに出演されてました。素晴らしかったです(お察し下さい)。

 お察しいたします。何やってんだ車田先生。
 そうか、永田さんそっちにも出てたんだ……

投稿者: 日時: 2005年12月31日 14:56 Web拍手

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