読書録「アウシュヴィッツと<アウシュヴィッツの嘘>」

4560720800アウシュヴィッツと(アウシュヴィッツの嘘)
ティル・バスティアン 石田 勇治 (他)

白水社 2005-06-07
売り上げランキング : 27,784

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


 ナチス、ホロコースト問題に関する最良の入門書であり、基本文献の一つです。
 アウシュヴィッツ強制収容所についての基礎事実と、アウシュヴィッツ――というよりも、ホロコーストを無かったことにしようとする人々、通称「修正派」への反論を収録。
 タイトルにある「アウシュヴィッツの嘘」とは、アウシュビッツで行われたユダヤ人虐殺を無害化し、否定し、歴史を偽造しようとする試みのことですな。

 世界的に見られるこの種の動きに抗するため、著者は第一部でアウシュヴィッツの通史と論点を手際よくまとめ、第二部では修正派の論点をまとめ、一つ一つ検証・論破してゆきます。
 感傷的にも感情的にならず、淡々と事実を積み重ねてホロコーストに向き合うスタンスのせいか、内容は非常に重い。
 修正派の論旨を一々丁寧に検証してゆく第二部など、いわゆる「論破」の爽快さは欠片もなく、ただただ重苦しさがつのります。久しぶりに読んでいて居住まいを正されるなあ、と。

 印象的なのが「何故この種の本が必要なのか」という問いに対する著者の答え。少し長いですが以下引用。
 文中の、「ロイヒター・レポート」というのは、米国人エンジニア、フレッド・A・ロイヒターが1988年に刊行した、強制収容所の「鑑定書」です。修正派にとっての基本文献の一つ。



私が思うに、こうした対決を避けて通るわけにはいかない。なぜなら、『ロイヒター・レポート』の本来の読者である右翼急進主義者たちはどんな反論にも耳を貸さないが、それ以外の多くの人間がこうした書物に出会った場合、きちんとした反論がないと不安に陥るからである。このレポートを詳細に検討したヴェルナー・ヴェークナーが強調しているように、こうした場合、いくら道徳的・政治的な主張をふりかざしても「こちら側の論拠が薄弱なのではないかという印象を植え付けるだけである。このディレンマを避けようとすれば、絶滅収容所のありさまとそこで起きたことを余すところなく解明しようとしなければならない。」


『アウシュヴィッツと<アウシュヴィッツの嘘>』P94


 慧眼です。
 実際のところ、ホロコースト問題に限らず、ある種のドグマを信じている人々を説得するのはほとんど不可能に近い。
 重要なのは、彼らの論に惑わされる人を出来る限り減らすべく、事実に基づいた的確な反論を行うことなのでしょう。

 第三章として、訳者たちの論文を収録。1995年に起きた「マルコポーロ事件」の際に書かれたものが大半です。
 参考資料も充実。英語やドイツ語のものの他、日本語で読めるものも補填されています。本書が最初に出版されたのは1995年ですが、それ以降の資料も載せているあたり良心的。新書サイズでこういうことをやってくれるのは素晴らしいですな。

 物理的にはコンパクトでも、内容は濃く、重い本。
 読んでおいて損はないでしょう。


●WEB拍手レス

>ルルイエ、吹きました。まさかそうくるとは。これで狂気山脈や南極にある巨大な穴があれば完璧です。

 当然そこらへんも探してみました。南極は解像度が低かったのではっきりとは見えなかったのですが。
 ……つまりあれだな。米国が提供している衛星画像で解像度が低いということは、南極には本当に何かが(ry

>K住職1を見て「ブラックロッド」のガンボーズを思い出したのは自分だけでない筈……

 私も思い出しました。
 住職強すぎ。

>ルルイエキター センスいいですな。毎度毎度。

 有り難う御座います。センスいいって言われることはまずないので、嬉しいですね。

投稿者: 日時: 2005年08月26日 19:50 Web拍手

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.gyosekian.net/mt-tb.cgi/216

コメントを投稿