ゲーム録「あやかしびと」

 本日の更新分は「あやかしびと」のネタバレが強くあります。未プレイ/プレイ中の方はご注意ください。







「あやかしびと」
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 コンプはしていたのですが、まだ感想など書いてませんでした。
 なのでつらつらと雑感を。
 結論から言いますと、非常に優れたエンターテイメントです。2005年度上半期エロゲでは個人的にベスト1。
 この作品を優れたエンターテイメントにしている要因は無数にありますが、特に際立っているのがキャラクターの魅力、個々のシーン演出の上手さ、そして優れた構造でしょう。


 まずはキャラクターの魅力。
 主人公・如月双七のいい男ぶりが際立ちます。
 涙もろく、情と信と義とに篤く、完璧超人とは程遠いが己に出来る最大限のことをやってのけ、最終的には困難を突破してみせるという、実に正しいヒーロー。
 受け手が期待するキャラクター像を作り上げたうえで、魅力を付加。危機に陥っても、安易な奇跡によって助かったりなどしない所がさらに好感度アップ。
 女性キャラもヒロインとして以前に、一人のキャラクターとして魅力的。特に、完璧と見えて実はパニックキャラの刀子さん、心の底に深い暖かさを秘めたトーニャが実によかった。締めるべきシーンをしっかり締めてくれるのは言うまでもありません。
 名手・中央東口氏のソリッドな絵の寄与するところも大でしょう。男やクリーチャーを描かせたら業界1と名高い氏ですが、本作では女性キャラの描写も高い水準にあります。


 映える舞台装置あってこそのキャラクター。この点も手は抜かれていません。
 平穏な日常は昼間の学園、自宅のマンションで展開され、アクション的状況は、夜の学園、工場に廃港、そして街の外で行われる。舞台分割をしっかりと行うことによって、シーン一つ一つに集中出来ます。
 主要な舞台となる神沢市の基本設定はありきたりですが(特異な能力者のための隔離都市というのは、定番中の定番ですな)、癖が無くとっつきやすいものとして機能しています。
 実際、あまりに街の特異性を強調してしまうと、主役が都市そのものになる危険があります。この方向性は正解でしょう。


 構造の秀逸さについて。
 「あやかしびと」のシナリオ構造は、映画とノベルゲームを上手く融合しているように思われます。
 D・ヒックスは「ハリウッド脚本術」において、ストーリー構成要素として以下の要素を上げています。
 各部分の詳細については「ハリウッド脚本術」か、「キャラクター小説の作り方」をご覧ください(後者には大塚英志の私見がかなり入ってしまっているため、前者をお勧めいたします)。

1:バックストーリー
2:内的な欲求
3:キッカケとなる事件
4:外的な目的
5:準備
6:対立(敵対者)
7:自分をハッキリとさせること
8:オブセッション
9:闘争
10:解決

 「あやかしびと」は、上記十要素を確実に備えています。
 物語ならば何でもそうだろうと思うなかれ。これらの要素をバランス良く配置した作品は意外なほど少ないものです。綿密な設計と、確かなプロット構築能力が要求されるわけですから。
 この辺り、筋金入りの映画好きとして知られる東出さんならではでしょうか。
 映画的に安定した構造を持つことにより、「あやかしびと」は揺らぎの無い、ユーザーを安心させる構成の物語となっているように思われます。良い意味で癖や破綻が無い構成というのは、エロゲーというジャンルでは貴重でしょう。本作の質の高さを担う一旦はここにあると思われます。

 ノベルゲームとしての魅力が発揮されているのは、BGMの使い方の妙と、軽快な会話の数々です。
 特に後者は絶妙でありまして、東出節とでも言うべき魅力的なものになっています。緊迫感に満ちているかと思えば、かけ合いのようなトークに転じたり、ユーザーを飽きさせません。燃え、萌え、笑い、泣きの四要素、全てにおいて高水準。
 小ネタも多く、セーブした時のシーンタイトルにも注目。「一緒に帰って噂とかされると恥ずかしい」と「注:ここは戦場です」にはセーブした瞬間大笑いした。
 かような会話を用いての日常描写に多くの尺を取ったことにより、ノベルゲー特有の心地好い没入感があります。小説においては日常描写が多すぎるとダレてしまうものですが(そちらが主眼の作品は除きます)、ゲームという媒体はBGMやグラフィックを使用可能。故に、ダレにくいです。
 穏やかな日々を丁寧に描くことによって、後のバトルシーンなどが際立つのでしょう。


 最も、残念な点がなかったわけではありません。
 どのシナリオでも終盤の展開が唐突な感がありましたのが少々気になりました。
 特にトーニャルートでそれが顕著。トーニャvsサーシャの決着には気が抜けてしまった感もあります。
 すずルートラストに関しては賛否両論でしょうか。私は楽しみましたが、かなりの急展開なので人によっては拒絶反応を起しても無理ないと思います。

 つらつらと書いてきましたが、文句なしにお勧め出来る作品でした。
 伝奇好き、学園もの好き、エンターテイメント好きといった方々ならば、購入して決して損はありません。年間ベスト級です。
 次回作も楽しみだなあ。


 ……しかし↑な書き方しておいて、まるっきり的外れなことばっかりだったらどうしよう。まあ、そうでしたら腹かっ裁いてお詫びする方向で。


 最後にお気に入りのキャラとシーンを。

・お気に入りキャラベスト3

 虎太郎先生:男の中の男。頼りになるアニキ。薫さんルートでは、ほとんど主役ですな。零奈のベタ惚れぶりにも笑った。
 会長:いやもう、何というか、強すぎます……心が。惚れました。
 光念兄弟:只のかませ犬やチンピラでなく、信念を有する熱い敵キャラ二人。特に一兵衛さんの言動にはたまらんものが。

 ……あれ、全部男キャラ? いや、それだけ魅力的だったのですが。
 実際全キャラ素晴らしすぎました。上にも書きましたが、殆どのキャラに見せ場がある辺りは本当良いですね。トーニャルートでの狩人とかたまらんかった。
 あと静珠さんの美人っぷりにハァハァ。ある意味一番好きかも。


・お気に入りシーンベスト3

 ドミニオン追撃:七人ミサキ~刀子さん煙突ダイビングが最高すぎますよ。影絵で疾走する演出も良かった。全シナリオで一番煮えたぎったシーンかもしれない。燃え泣き。
 チェルノボグ迎撃:夜の後者で、一点集中型の主人公チームvs平均的に強力な特殊部隊というシチュエーションだけでもう満腹。Phantom第三章へのオマージュとかいう話も聞きましたなあ。
 刀子さんルートクライマックス:か、会長ぉぉぉぉぉ!!(ボロ泣き)

投稿者: 日時: 2005年07月08日 22:04 Web拍手

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