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ニューヨーク州の地方都市スパータ。大都会の喧騒からは程遠いこの街が恐怖に包まれたのは、或る冬のことだった。
その日、新聞記者ビューアル・ティサムが目撃したのは、工事の表示板が落下し、走行中の車に激突するという不運な事故だった。運転手は死亡、同乗していた女子大生は一命を取留めるが重態。
どう見ても只の事故であったが、現場調査により、表示板が何者かの手により細工されていたことが判明する。そしてビューアルの元に届く一通の手紙。
「……この手紙が最後だなどと思うなよ。まだまだ死人は出る。HOG」
手紙の通りに事件は続く。
階段から墜落死する老人。
氷の刃に首を断たれた少年。
オーバードースによる中毒死。
私立探偵ロン・ジェントリィ、有能な警視フライシャーに率いられた警察は必死でHOGを追うが手がかりは掴めない。ビューアルの元には、HOGからの嘲笑うかのような手紙が届き続ける。
警察もロンも進退窮まり、そしてついに、ロンの恩師でもある天才犯罪研究者、ニッコロウ・ベネデッティ教授が調査に乗り出す。
1981年、サスペンスやら犯罪心理やら社会派ミステリやらが氾濫していた中、突如現れたガチガチの本格ミステリが本作です。
基本構造からして、天才犯罪学者にして世界最高の名探偵、ニッコウロウ・ベネデッティvs正体不明の謎の連続殺人者"HOG"という大時代ぶり。
自己のスタイルにこだわる名探偵、謎めいて挑発的な犯人、右往左往する警察、謎めいた大事件――と。本作には「本格ミステリ」という言葉から想像される道具の大半が揃っています。
この種の大仰な道具を揃えたミステリは魅力的でありますが、一歩間違えると大袈裟なだけで失笑ものの作品となってしまう危険を常に孕んでいます。
その点において、「ホッグ連続殺人」は見事に成功しています。
デアンドリアの作風は非常に理知的であり、文章や会話も清潔で平明です。そのためスラスラと読め、謎めいた事件の展開、関係者を一同に集めた謎解き、言葉遊び、探偵vs犯人の構図といった類のものに集中出来ます。本格ミステリの醍醐味を堪能出来るわけですね。
この方向性は正解でしょう。大仕掛けな舞台装置に大仰な演出では、読者も辟易してしまうというものです。本邦においても乱歩を意識しすぎて失笑ものとなってしまった「本格」作品がいくつあることか。
ミステリの命であるメイントリックも巧妙に読者の裏をかいてきます。これについて詳しく語れないのがミステリ読みの辛いところ。
とまれ、本格ミステリの魅力が凝集された良作です。
ただ、問題点が無いわけではありません。
解説でも指摘されている犯人の動機が不自然だという点は確かです。
登場人物の個性も類型的で凡庸。探偵役のベネデッティ教授は流石に魅力的ですが、それ以外の人物達は居るだけ感が強い。主人公の一人であるロンと、心理学者ジャネットのロマンスや、フライシャーの苦悩にしても、只の付け足しという感があります。
このあたりは好みが分かれる所でしょう。
総合的に見て三つ星。
ただ、作風の好みもありまして+0.5点です。
●WEB拍手レス
>ホッグ星4つですか!しまっておいただけなので、今度読んでみようかな…
すいません、読み帰してみて3.5に訂正しました。
とはいえ、上に書いたように優れた作品なので、一読をお勧めします。
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